ノムコムトップ > 家ココチトップ > 家ココチ[vol.1] 子供のココチ 「小さくても自分だけの空間が欲しい・・・・」 | ||||||||||||||
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さまざまな社会現象から子どもに個室を与えることに不安を覚える声も聞こえます。でも、塾や習い事で、子どもも多忙な現代。一人になれる場所がないと、ストレスになる--。そう話すのは建築家の彦根明さんとアンドレアさん。自邸には大人を含め、家族一人ずつの個室があります。プライバシーを守る個室は、あくまで最小限。隣接する共有スペースは、家のどこでも家族の気配が伝わり、わずかな時間でもコミュニケーションが取れる場所になっています。 家族に見守られながら暮らすことで、子どもにとっての個室の意味が、一層明確になってきます。 | ||||||||||||||
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![]() 都内の閑静な学園都市にある、建築家の彦根明さん・アンドレアさんの事務所兼自宅。高台の敷地は、道路面にある事務所が法規上の地階にあたり、1・2階が住居になっています。1階はキッチンと吹き抜けのダイニングスペース、バスルームなど家族共有の場所。2階には、中学3年生の長女、小学5年生の次女を含めた、家族それぞれの個室が並びます。家の設計は、この4つの個室を並べるところからスタートしました。
まず個室ありき。「子どもに限らず、誰でも一人になりたい時があるもの。ある程度の年齢以上は、個室がないとストレスになるから」とアンドレアさん。けれど「こもってすべてが充実するわけではない」と明さんが話すように、個室はどれも同じ4畳の広さ。ベッドと机、棚が置ける程度のミニマムなものです。眠ることと、自分の時間を過ごすために必要な最小限のテリトリーは、本能的に落ち着ける広さに感じられます。最小限とはいえ天井が高く、南のハイサイドライトから光が差し込む、明るくて気持ちのいい空間。この条件も、すべての個室に共通したものです。 |
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個室以外はすべて共有スペース。2階のコミュニケーションスペースにはゲームやテレビがあり、長女が友達と遊ぶのもこの場所です。吹き抜けでつながるダイニングルーム、階段室で声が届く事務所スペースなど、共有スペースに仕切りはありません。個室入り口の引き戸はごく自然な習慣として開放しているため、どこにいても、互いの気配が常に感じられる環境です。 子どもたちは、事務所の玄関から帰宅し、勉強するのも事務所やダイニングといった人の気配を感じる場所だそう。「以前の家では親子が川の字で眠り、食事スペースの脇に子供スペースがありました。一緒にいることの大切さ、安心を肌で感じているのでしょう」と夫妻は見ています。誰かが見てくれているというだけで、子どもたちがコミュニケーションをとりやすい雰囲気が生まれます。「泣いて笑って、様子がよくわかる。それなりに音や声が気になるし、けんかの材料になることも(笑)。でもテレビや音楽がうるさい時は、お互い様でボリュウムダウンすればいい」(アンドレアさん)。 | ||||||||||||||
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実は彦根家には、リビングがありません。子どもと一緒に過ごす短い期間を考え、コミュニケーションスペースを優先したためです。家族が集まるのは、もっぱらダイニングスペース。家族の衣類も、ダイニング隣のコンパクトな収納室に集約しています。大人も子どもも忙しく、時間がない現代では、食事や入浴、着替えのちょっとした時間が、大事なふれあいのタイミングなのです。 さらに、プライバシーの尊重と、子ども部屋の要素を減らしてシンプルにすることも、収納を集約したねらいでした。「複雑さをなくし、子どもが自分でも片付けやすい部屋にしました。できたことを大人に見せられる。できるとほめられる。その自信と責任を持てるように」 子どもができる範囲、信じられる範囲を大人が判断し、その中で一人の人間として認めること。個室の意味は、そこにあるようです。個室以外のスペースは、すべて家族の共有、みんなの家。大事なモノはその理由を伝えて注意を促すなど、子どもが立ち入れない場所をつくらないのが、彦根家のスタイルです。 個と共有のメリハリ。個室単体で考えずに、共有スペースとの相乗効果で見直してみれば、子どもはひとりの居場所、みんなとの居場所と、自由に使いこなすのかもしれません。そしてちょっとした工夫で、共有スペースがコミュニケーションの場所に変わりそう。家がまた少し、ココチよくなるはずです。 (取材・文 甲嶋じゅん子) |