2012.11.6:Vol.266

居住用不動産取得者の動向調査から
先般、「不動産流通業に関する消費者動向調査2012年度」が一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)より発表されました。首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で2011年4月1日~2012年3月31日に引渡しを受けた住宅購入者を対象にしたもので、最近の居住用不動産の消費者動向が分かるデータとなっています。住宅ローン利用及び既存住宅購入者の意識の変化を、調査の推移を踏まえてみてみたいと思います。
- 金利は空前の低金利が続いています。民間ローンを利用した購入者が選んだ金利タイプの推移を見ると、かつて人気の高かった「固定金利・期間選択型」が2007年59.0%から減少を続け、今回は8.1%にまで利用割合が減少しています。逆に変動金利型を選択した住宅購入者は2007年12.7%から増加傾向となり、前回84.6%⇒今回83.9%と、このところ8割を超える人が変動金利を利用していることが分かります(図1参照)。変動金利を選択した理由を複数回答で尋ねたところ、「現在の金利が低い71.1%」、「今後も金利はそれほど上昇しないと思った55.3%」が挙げられています。
- 一方、フラット35(35Sの利用を含む)の適用が可能な住宅購入世帯の中で実際に融資を利用した割合は、新築住宅購入者は29.9%(前年32.6%)、既存住宅購入者は30.4%(前年47.1%)と前年よりはやや減少傾向のようです。
- 既存住宅購入者についての、購入理由の割合の推移をみてみましょう(図2)。複数回答で尋ねた結果で「希望エリアの物件だったから73.5%」が連続して購入理由の第1位に選ばれています。購入エリアを自分で選べる点が既存住宅の最大のメリットであると認識されているようです。一方、今年度の調査で最も変化のあったのは、従来第2位を継続して確保していた「手頃な価格だったから50.6%」に代わって、「良質な物件だったから52.2%」が第2位となっている点です。これは立地に次いで、住宅の質が購入の決め手になってきているという意識の変化の表れと言えるのではないでしょうか。
- 一方、新築住宅購入者に対して、既存住宅を選ばなかった理由を聞いた結果では、第1位を続けている「新築の方が気持ちが良いから」の割合が2009年70%⇒2012年59%にまで減少している点が特筆されます。近年、不動産の分野にストックを見なおす動きが出ていますが、消費者動向という観点においても、「既存住宅VS新築住宅」においての意識に大きな変化が見られ始めたと言えそうです(図3)。
(担当:池田 徹)