2011.7.17:Vol.242

改正高齢者すまい法の成立
介護や医療と連携して入居者に高齢者支援サービスを提供する「サービス付き高齢者向け住宅」の都道府県への登録制度の創設を盛り込んだ改正高齢者居住安定確保法(高齢者住まい法)が4月27日可決されました。6か月以内の施行が予定されます。高齢者向け施設の体系は複雑で分かりにくい面がありますが、今後この分野も広がりを見せる可能性もあると思います。
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高齢者のみの世帯(高齢単身世帯、高齢夫婦のみ世帯)が増え続けています。
2010年⇒2020年の10年間で、
高齢者人口:2900万人⇒3600万人
高齢者のみ世帯:1000世帯⇒1245万世帯
の増加が予想されています(国交省資料)。
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我が国の高齢者向けの施設や住宅をみると、有料老人ホームなど介護を前提とする施設系のものは全高齢者に占める割合が3.5%とほぼ先進国に並んでいるものの、比較的自立度の高い方々を対象とする住宅系のものは0.9%と低い水準にあると言われています(図1)。これを国土交通省の成長戦略では2020年までに欧米並み(3~5%)にまで引き上げることが示されています。
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家族の支援を受けられないと考えられるこれら「高齢単身・夫婦のみ世帯」に対応するため、 見守りなどのサービスを提供する高齢者住宅の登録を制度化・支援することで、その供給を促進することを目的として、この春「高齢者すまい法」が改正制定されました。
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キーワードは「サービス付き高齢者向け住宅」という言葉です。この住宅では、
1)床面積が原則25平米以上、トイレや洗面設備などの設置、バリアフリー構造の設置。
2)入居者向けサービスの提供(少なくとも「安否確認」や「生活相談」の支援サービス)
3)前払い家賃に関する返還ルールと保全措置を講じる
の3点を条件として都道府県知事への登録を可能とするものです。
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この高齢者住まい法は国土交通省と厚生労働省との共管となっている点が特徴です。同法では要件を満たす有料老人ホームの登録も認めており、高齢者住宅と有料老人ホームを一元的なルールの下で再編成する狙いがあります。一方で、従来の高齢者専用賃貸住宅、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅の各制度は基本的に廃止されることになります。
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2012年度に予定されている介護保険の改革の中でも、「孤立化のおそれがある高齢単身・夫婦のみ世帯への支援」が取り上げられていて、これまでの家族同居世帯を標準としたサービスから「高齢単身・夫婦のみ世帯」を支える「新型サービス」の普及を追加していくことになるということです。
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ところで、従来の高齢者向け住宅や施設にはさまざまなものがあり、大変わかりづらい仕組みになっています。これら施設を大別すると、
1)介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設)
2)老人ホーム等(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、グループホーム)
3)賃貸住宅(高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅など)
に分類されると言えるようです。
これら施設のうち、「介護保険施設」におけるサービスの対価は税務上の医療費控除の対象
となることからもわかるように、医療依存度の高い施設入居という位置づけととらえられるようですが、今回の高齢者住まい法の改正が対象とする、高齢者向け賃貸住宅や有料老人ホームは、すまい(住宅)としての性格として位置づけられるということなのでしょう。
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軽度の要介護・要支援者向けの施設が少ないことが課題として認識されてきており、しかしながら要介護1以下の高齢者の占める割合が低くないという傾向が指摘されていて、日常生活を送る場としての「住宅」で暮らしたいというニーズにこたえるための多様な施設は今後たいへん重要になると考えられます。
(担当:池田 徹)