2010.12.11:Vol.233

相続税の課税内容の変遷
今年も税制改正の時期になりました。
昨年の税制改正大綱の目玉は、平成22年から23年にかけての「贈与税の特例による非課税枠の拡大」でした。一方、相続税としては小規模宅地の課税を強化する方向性が打ち出されました。この相続税見直しの方向性は今回の税制改正の検討にも継続されています。改正内容の発表の前に、これまでの相続税の課税内容の変遷を確認しておきたいと思います。
- 相続税の意義は、
1.富の再分配機能
特定の人に集中した財産に対し、相続人が相続によって偶然得た富の増加に課税することにより富を再分配する
2.所得税の補完機能
所得税に公平に課税されなかった場合等の結果に対し清算をする機能にある
と言われています。
- 日本における相続税の課税状況
現在、相続税の課税対象となる財産を残す人(課税件数)の相続全体数(死亡者数)
に対する割合は100人に対し4人強とかなり小さな割合となっています。バブル
以前の昭和58年時点においての納付税額の課税割合は、5.3%で、現在の水準より
も高い割合でした。バブルのピークには、8%に近い水準にまで課税割合が上昇して
いましたが、その後の地価の下落に伴い直近では4.2%の水準まで下落しました(図1)。
- バブルによって課税割合が高くなりすぎた事から、昭和63年および平成4年に相続税の基礎控除額を引き上げることによって課税対象となる件数を減らす改正が行われた結果、
課税割合は下降しましたが、加えて地価の水準も下落したことから、課税割合はさらに低下することとなりました。地価水準がバブル前の水準に近づいてからも、
相続税の基礎控除額5000万円とした基準は維持されてきたため(図2)、相対的に相続税の課税割合が低い状態がつづいてきました。
- 昨年の税制改正大綱では相続税に対する見直しの方向性が提起されています。現状で
は再分配機能が果たせていないとの認識から、課税ベースの拡大や税率構造の見直し
が検討されています。国の財政としては相続税収に期待する面も
多くあり、本来の相続税の再分配機能の観点と併せて、ここに税制改正の焦点があた
ることに注目しておきたいと思います。
※図表の「基礎控除」は定額部分のみを表示しています