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不動産コラム
 Vol.154(H18.5.31)  


■ シリーズ「H18年度税制改正」9~定率減税廃止

H18年度税制改正シリーズ最後となる9回目は「定率減税の廃止」です。H11年に景気対策として導入された定率減税は、H14年「あるべき税制」において<個人所得課税の基幹税としての機能回復(⇒定率減税の廃止)>を課題として掲げられ、今回その具体化の取組みとして、廃止となりました。それにより、各世帯は税負担が増加することになりますが、モデルケースとともにその影響度合いについてもみてみましょう。
定率減税は、経済状況の悪化(H9年のアジア通貨危機、H9・10年の大手金融機関の破綻等金融危機、H10年度の名目成長率▲1.8%、”日本発の世界恐慌”のおそれ等)を背景に、小渕内閣の恒久的減税としてH11年度税制改正で導入されました。その内容は所得税額の20%相当額(上限25万円)、個人住民税所得割額の15%相当額(上限4万円)を控除するというものでした。その後、H17年度税制改正により、控除割合がそれぞれ10%(上限12.5万円)、7.5%(上限2万円)と半減されています。
今回の改正では、定率減税が、そもそも景気対策のための税負担軽減措置であったところに経済状況が改善(不良債権額の減少、名目成長率+2.0%[H18年度見通し]等)してきていること、将来世代の税負担によって成立する減税であって見合いの財源がないこと、などを背景に、税制の抜本的な改革の一環としての「定率減税の廃止」が決まりました。
廃止は所得税についてはH19年1月分から、個人住民税についてはH19年度分からとなります。定率減税が廃止されることによる負担額の変化は下表の通りです。
定率減税の控除割合の変化
表
定率減税の廃止による所得税・個人住民税の合算負担額の変化(年額ベース)
(単位:万円)
表
< H18年度税制調査会資料より >
注) 1. 夫婦子2人の場合は、子のうち1人は特定扶養親族に該当するものとしています。
2. 夫婦子2人の場合は、給与所得者が1人の場合の負担額です。
3. 一定の社会保険用が控除されるものとして計算しています。
4. 定率減税額は、所得税額の10%(上限12.5万円)、個人住民税所得割額の7.5%(上限2万円)として計算しています。
定率減税の廃止による増収見込額は概算で初年度約1,990億円と算出されています。
なお今後の景気動向を注視し、必要があれば政府・与党の決断により、定率減税の見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応するとしています。
H18年度税制改正において、税源移譲・定率減税等についてひとまずの決着がついたことで、来年度以降の税制改正では、消費税率の見直しや環境税の導入等の論点が出てきそうです。
※ 制度の活用に際しては、税理士等の専門家にご相談の上、実行して下さい。



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