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不動産コラム
 Vol.132(H16.6.21)  


■ 防犯意識と住まい


まだそこまで遠くない以前、日本は「安全大国日本」と言われ、戸締りをしなくても買物に出かけることが当たり前でした。今や「日本の安全神話は崩壊した」などと評されることも増え、ゴミ出しにも鍵を掛けるように宣伝されています。最近の住まいの防犯に対して、人々の意識はどうなっているでしょうか?

「治安に関する世論調査」によると、ここ10年で日本の治安は「よくなったと思う」7%、「悪くなったと思う」87%と大多数の人が治安の悪化を感じています。また、犯罪に対する不安が「多くなったと思う」80%、「少なくなったと思う」5%(※1)と治安の悪化に伴い、不安に思う傾向も増加し、その傾向は高齢になる程強くなっています。また、中でも不安になる場所としては「路上」54%、「繁華街」45%、「公園」34%、「駐車場」23%、「エレベーター」20%、「自宅」18%(※1)などが挙げられています。不安になる犯罪として一番に挙げられているのは、「自宅に入る空き巣」の55%であり、次いで「すり、ひったくり」50%、「暴行、傷害などの粗暴な犯罪」43%(※1)となっています。
しかしこれらの不安と実際の住みかえとの関連性を見てみると、居住状況の変化の理由として「犯罪に対する安全性に問題があったため」とした答えは1.3%に止まり(※2)、住みかえの動機付けとなる要素としてはまだ弱いようです。


住まいにおいて重視する点を尋ねた質問でも「犯罪に対する安全性」を重視するとした割合は7.5%であり(※2)、住みかえを考える場合、日常生活における快適性や利便性(広さ、間取り、周辺施設、バリアフリー等)をまず重視し住まい選びの際には、防犯性能への関心が薄いのが現状と言えるようです。
一方首都圏において、今後費用負担が増加してでも取り組むべき生活環境項目を尋ねたところ、「治安の良さへの安心感が持てること」を66%の人があげており(※3)、これらを勘案すると、治安が悪化していながらも住みかえ時期には防犯への意識は低く、住み始めると次第に不安要素として浮上してくる、という実態が浮き彫りになってきます。

※3「平成16年度 首都圏整備に関する年次報告」(国土交通省)による。
上記の流れを受けて、国土交通省は住宅における防犯性能の向上を図るため、「構造の安定」「火災時の安全」「劣化の軽減」「維持管理への配慮」「高齢者への配慮」に加える形で、住宅性能表示制度に「防犯」を評価対象とする方針を打ち出しており、「開口部の侵入防止対策」を住宅性能表示の評価対象として、来年4月から施行する方向で検討に入っています。





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