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不動産コラム
 Vol.129(H17.2.15)  


中古住宅市場のゆくえ?


わが国の総住宅数が総世帯数を上回ってから久しい中、今般の税制改正では中古住宅ローン減税制度の築年数要件の緩和が打ち出されるなど、中古住宅市場の拡大が政策として位置付けられています。そのような中、住宅に関する需要や志向の実態はどうなっているのでしょうか。6年ぶりに行われた内閣府調査「住宅に関する世論調査」をもとにご紹介します。


内閣府調査「住宅に関する世論調査(H16年)」によれば住宅を「所有したい」とする人の割合は79.0%であり、「所有する必要はない」12.2%を大きく上回っています。また、30歳代では「所有したい」が84.7%になります。所有したい理由としては「安心して住み続けたい」55.2%、「資産価値がある」23.7%、「子供に財産を残したい」9.2%とあり、したくない理由として「多額のローンをかかえたくない」28.6%や「維持管理がわずらわしい」19.8%が挙げられています。「資産価値がある」との答えは地価の下げ止まり傾向を受けてかH10年調査(21.7%)から増加し、年齢別に見ると70歳以上11.9%→40歳代26.2%→20歳代40.9%と若年になるほど住宅を資産として認識していることが分かります。

「住宅を購入するとしたら新築か中古か」の問には「新築が良い」とする割合は82.3%に昇り、「中古が良い」とする割合は3.4%に留まっています。新築が良い理由としては「間取り・デザインが自由に選べる」41.9%、「新しくて気持ちがいい」34.4%、「中古は住宅の品質に不安」10.6%等が挙げられ、中古が良い理由としては「新築よりも安い」43.5%、「時期を見て建て替えやリフォームをした方が資金計画に無理がない」27.5%、「実際の住宅や近隣の居住者を確認できる」17.4%等が挙げられ、中でも「実際の住宅や近隣の居住者を確認できる」の回答については男性9.3%に対し、女性の30.6%が選んでおり、女性の住宅環境への関心の高さが伺えます。

「同じ住宅に住み続けたいか」の問には「住み続けたい」81.6%、「住み続けたいと思わない」8.8%との結果となり、高齢化するにつれ定住志向が高くなっています。「住み続けたい」理由も年齢による傾向が見られ、「地域の生活環境になじんでいる」「家族の思い出がつまっている」からとの答えは年齢が低くなるごとに、逆に「地域の人とのつながりを大切に考えている」「強い思い入れがある」からとの答えは年齢が高くなるごとに多くなっています。

「街なかや都市の中心部と郊外のどちらに住みたいか」の問には「街なかや都市の中心部」を選んだ人は29.7%、「郊外」とした人は65.1%となりました。「郊外に住みたい」とする割合は50歳代をピークとして若干下降しており、高齢者の都心回帰志向が表れ始めたのかもしれません。
「バリアフリー対策への取組み」について「関心がない」は6.5%と低いものの、「行政からの支援があれば前向きに考えたい」31.1%、「関心はあるが費用負担を考えると難しい」28.0%と費用負担により取組みに歯止めがかかっている人が多く、「自主的に取り組みたい」は19.9%に留まっています。なお、「すでにバリアフリー化している」人は9.5%となっています。

「地球温暖化対策への取組み」についてもほぼ同様の結果「関心がない」5.1%、「行政からの支援があれば前向きに考えたい」34.3%、「関心はあるが費用負担を考えると難しい」38.5%、「自主的に取り組みたい」14.6%、「すでに対策を十分行っている」1.6%となっています。


国土交通省「住宅需要実態調査(H15年)」では現在の住宅に対する評価を「満足」とする割合は55.9%、「不満」とする割合は42.4%となっており、不満要素として「高齢者等への配慮」66.3%、「住宅の防犯性」53.8%、「省エネルギー対応」53.4%等が挙げられています。


アメリカの中古市場では人口当たりの中古流通量は日本の12.6倍の規模となっており(「平成13年度国土交通白書」より)、日本における中古住宅の市場規模は小さいといえます。今後様々な「不満」をかかえた住宅が中古市場に流通していく中、新築住宅の供給に対して、どれだけ魅力的な市場を形成させられるかが問われることになりそうです。








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