不動産コラムトップ > コラムVol.126
不動産コラム
 Vol.126(H16.12.17)  


税制改正大綱の発表


平成17年度の自民党税制改正大綱が発表されました。
今回は国民にとって関心の深い定率減税の話題が中心になっており、不動産に関する税金に関しての新たな話題がほとんどみられなかった改正でしたが、住宅ローン減税等に関する築年数制限の撤廃という、住宅の仲介業務において避けて通れない築年数の問題について、税制面で一定の考え方が整理された事になります。

今回の住宅土地関係の改正の背景として、「ストックの活用」が現在の社会資本整備についての国の中心課題となっていることが挙げられます。
近年の税制改正の課題は、減税による景気回復という観点が継続していたわけですが、今回は定率減税の縮小と言う議論でもわかるように、少子高齢化への対応や財政の均衡といった方向にカジが切られた印象がします。

土地住宅税制において、唯一新たに取り上げられたテーマが、『中古住宅に係る特例措置における築後経過年数要件の撤廃』です。
適用される制度は、次の5つの特例となります。

 
(1) 住宅ローン減税制度(所得税)
(2) 特定居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得課税の特例(所得税・住民税)
(3) 住宅取得資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例(贈与税)
(4) 住宅用家屋の所有権の移転登記に係る登録免許税の軽減措置(登録免許税)
(5) 中古住宅の取得に係る中古住宅・中古住宅用土地の不動産取得税の特例(不動産取得税)

これまで、これらは全て特例適用にあたっては、耐火建築物や非耐火建築物の築後経過年数が制限されていました。
来年からは
A) 耐火建築物で築25年超のもの B) 非耐火建築物で築20年超のもの
であっても、新耐震基準に適合するものは、上記5特例が適用される事となります。

参考までに、東日本レインズ調査における成約ベースでの中古住宅流通の状況をみると、
A) 築25年超の中古マンションの構成比率は、38.8%(2003年度)
B) 築20年超の中古戸建住宅の構成比率は、17.7%(2003年度
となっていて、従来適用対象でなかった物件で、今回のこの改正で特例適用が受けられることとなる可能性のあるものは相当数に上る事がわかります。

適用開始日は2005.4.1以降に取得したものが対象となりますので、注意してください。
※その他の改正項目としては、『登録免許税・印紙税に関する軽減特例の延長』があります。

直接の税制改正項目ではありませんが、もう1点注目しておきたい項目として、『定期借地権の一時金の取扱いの明確化』という改正(案)があります。

これは、従来、定期借地権の権利金として一時金を支払う場合、この一時金の性格を「地代の前払い」の意味合いで取り扱われているにもかかわらず、年々の償却が出来ず、借地権返還時に特別損失として一括して計上する会計制度がとられていました。

今回の改正は、この一時金を「地代の前払い」として明確に取り扱うことにより、期間に応じて段階的に損金に算入できる(費用化できる)ようにするものです。
土地所有者側においても、受取る一時金が単年度の収益ではなく段階的に算入できるというメリットがあります。

この流れは、特に企業会計の考え方が、各会計年度に適切に費用が処理される事を重視する方向にあることに合致したものといえます。
景気回復の局面の中で、企業の土地活用ニーズの高まりを受けて、特に事業用借地権の活用に対応する制度改正として注目していきたいと思います。

今回の築後経過年数要件の撤廃については「将来にわたる中古住宅流通市場の拡大に寄与するもの」として、評価される制度改正と言えるのではないでしょうか。






[an error occurred while processing this directive]