　Vol.125（H16.11.10）

相続時精算課税制度の利用状況

相続時精算課税制度が平成15年1月1日より導入され、その利用状況が関係各機関から報告されています。そのうち、財務省による「相続時精算課税制度に関わる贈与税の申告実態調査(平成15年度分)」、(社)不動産流通経営協会による「不動産流通業に関する消費者動向調査　第９回(２００４年度)」のデータを基に住宅購入資金の調達源泉に起きている変化を報告します。

相続時精算課税制度とは、生前贈与を行いやすくする為に導入された制度です。相続時に精算することを前提に、将来において相続関係に入る親(65歳以上)から子(20歳以上)への贈与については2500万円まで贈与税が大幅に軽減・簡素化されます。

住宅取得等資金の贈与の場合には、贈与者の年齢制限が除外されるとともに、非課税枠が3500万円までとなります(適用期間　H17.12.31迄)。

平成15年の制度利用者数(受贈者数)は7万8千人、贈与者数は延べ8万3千人、取得財産の総額は1兆1621億円、受贈者一人当たりの平均取得財産価格は1485万円となっています。

従来の非課税枠550万円を上回る額の利用者は改正前39％から改正後52％と大幅に比率を上げています。

受贈者数の構成割合をみると、特別控除の限度額2500万円以下の贈与が約90％、住宅上乗せ分を加算した3500万円以下の贈与は約98％であり、非課税枠内に抑えた財産贈与が大勢を占めている様子が窺えます。

住宅購入資金利用者の内訳を見ますと、１５年度には親族からの贈与の割合は18％となっています。これはおよそ５人に１人が贈与資金を住宅購入資金に当てていることになります。

住宅金融公庫は独立行政法人として改組されるため、利用者数も５％低下し､逆に銀行等の民間ローン利用者数が８％増加､親族からの贈与利用者数は４％増加しています。結果、親族からの贈与利用者数は住宅金融公庫融資利用者を上回り、住宅購入資金利用者数順位は①現金､預貯金等②銀行等の民間ローン③親族からの贈与、の順となりました。

以上の調査結果から、親族間贈与は公庫融資に変わる新たな資金源として、今後利用者が増加する可能性があります。また住宅取得等資金に利用した受贈者年齢構成割合をみると30歳未満が約13％、30歳以上40歳未満が約53％、40歳以上50歳未満が約25％、50歳以上が約９％となっており、若年層を中心とした住宅取得促進に相続時精算課税制度が寄与するところは大きいものと推察されます。