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不動産コラム
 Vol.108 (H16.1.26)  


定期借家制度の動向


2000年3月1日からスタートした定期借家制度は、法律制定時の附則の中に、この法律の施行後4年を目途として、居住用賃貸借のあり方について見直し、合わせて施行状況の検討とその結果に対する必要な措置を取ることが明記されていました。
その期日が目前に迫った現在、自民党において制度の改正検討委員会が開催されています。国土交通省で実施した、施行状況調査の結果と合わせてその動向を探ります。


定期借家制度とは、これまで行われていた正当事由による解約制限のある賃貸借契約とは異なり、契約期間が満了すると更新される事なく確定的に賃貸借契約が終了する制度です。
2000年にスタートした、この定期借家制度の主な特徴は次のようなものでした。
  1. 契約の更新がない
  2. 貸主は書面により「更新がない」旨を説明する義務がある
  3. 期間満了から6ヶ月前までに賃借人に通知する義務がある
  4. 賃借人の中途解約は居住用に限り200m2未満のものについて一定の解約権がある
  5. 居住用で旧法で契約しているものは、当分の間「定期借家」に切り替えが出来ない

その後、この制度は、不動産の証券化の実績が急拡大するにつれて、オフィスビルの賃貸借において広く普及するようになりました。一方居住系の賃貸借については、入居者の権利を制限する事と同時に家賃が下がる懸念があるので、普及についてはかなり時間がかかることが予想されていました。そこで、国土交通省では、事業者及び居住者に対しての実態調査を行ってその普及度合と課題を検討することとなり、その結果が1/16に発表になりました。

「定期借家制度実態調査の結果」について、主な概要をご報告します。
<事業者サイド>
  1. 定期借家契約の実績のある事業者は32.7%
  2. 借家契約のうち、定期借家契約は4.7%(2001年調査時点は2.8%)
  3. 定期借家契約の家賃は、普通借家に比べて「低下傾向にある」30.6%、「同水準」31.2%
  4. 平成14年度中に契約期間が満了した定期借家契約のうち、45.0%が同一賃借人と契約
<入居者サイド>
  1. 定期借家制度の内容を知っていた人は44.3%
  2. 定期借家契約を締結した理由は「気に入った物件が定期借家だった」63.5%、「同条件の物件と比較して家賃が安かった」14.7%
その他、特に注目すべき結果として、次の3点が挙げられます。
  1. 賃借人の中途解約権については、「存続すべき」=事業者59.9%、入居者78.2%となっていて、事業者サイドにおいても借り手を見つけにくくなる点を懸念しています。
  2. 普通借家から定期借家への切替えについては、「認めるべき」=事業者66.5%、入居者53.1% となっていて、入居者サイドにおいても当事者が合意なら禁止する理由がないとしてます。
  3. 事業者が定期借家制度を活用しようと考える事例のトップ3は、「建替やリニューアルの計画がある場合60%」「転勤等の留守宅53%」「法人契約の場合26%」となっています。

これらの結果を踏まえて、自民党では、「定期借家権等特別委員会」を開催し議員立法による改正案を今国会に提出する予定で検討を開始しています。その中での主な検討課題は次のようなものとなっています。(特に(2)については借り手側の不利益が発生する課題です)

<定期借家に関する事項>
  1. 書面による説明義務の廃止
  2. 200m2未満の居住用定期借家契約における中途解約権の廃止
  3. 居住用建物の普通借家契約から定期借家契約への切り替えの解禁
<その他の事項>
  1. 普通借家契約における正当事由制度のあり方
  2. 事業用定期借地の存続期間の上限の引上げ(現行では10年以上20年以下の制限あり)

この3月が改正期限というわけではないのですが、本国会での何らかの改正があり得ます。







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