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不動産投資の最新動向

不動産投資の物件選びのポイントや不動産投資の出口戦略、利回り・不動産価格・マーケット情報など不動産投資に関する最新動向をわかりやすく解説いたします。

宮澤 大樹
野村の仲介+
資産コンサルティング部
1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。
その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
不動産投資のノウハウ・事例

不動産投資シミュレーション(1)買うべき物件の見極め方

2019年3月 6日

「この物件に決めていいの?」と迷ったとき、有効なのが不動産投資シミュレーションです。空室や家賃下落が発生したら?出口戦略は?など、キャッシュフローや損益分岐点を試算、収益性を分析します。



投資判断に役立つ投資シミュレーションとは

投資物件を選ぶ最初の段階では、物件概要で表示されている満室想定の「表面利回り」がよく使われます。この表面利回りは、候補となる物件を絞り込むには有効ですが、最終的な判断を下すには、必ずしも十分な指標とはいえません。

たとえば、同じ7%台の表面利回りでも、物件によって、また購入する人によって、キャッシュフローは異なります。金利などの資金調達の条件、物件の構造や築年数による減価償却費の水準、賃貸稼働率などで、税引き後の手取り金額が変わってくるからです。

現在のような複雑なマーケットの中では、将来的な資産価値の見通しも違います。出口を含めた総合的な投資判断は、従来にも増して難しくなっているのではないでしょうか。したがって、投資家の個人(あるいは法人)の状況に合わせて、個々の物件を多角的に分析しなければ、本当にその物件を選んでいいかどうかは判断できないのです。

最近は、不動産投資シミュレーションの分析ツールが以前よりも格段に進化しています。私がお客様に提案する際には、必要に応じて6~7種類のシミュレーションをしています。簡易収支(キャッシュフロー)、税引き後利益、キャッシュフロー累積予想、売却シミュレーション、法人シミュレーションなどです。

従来から行っていた簡易収支計算にしても、空室率や家賃の下落率を柔軟に設定することが可能になりました。空室率や家賃の値下がり率によるキャッシュアウト(赤字化)の境目はどこか、出口戦略を何年目に想定するのが妥当か、などの損益分岐点を算出することができます。今回は、こうした分析ツールを活用するメリットの一端を紹介しましょう。



空室率が何%まで耐えられるか、キャッシュフロー試算で分かる物件の実力

表1は、神奈川県で売り出された1億6,500万円の一棟マンションについて、税引き前のキャッシュフローを試算したデータです。満室想定時の表面利回りは7.27%と、比較的ニーズの高い利回り水準といえるかもしれません。価格の1割を頭金とし、諸費用を含めて自己資金を約2,450万円投入しています。

表1.税引き前キャッシュフロー(CF)の試算例
物件:神奈川県 一棟マンション 築22年
価格:1億6,500万円 諸費用:約800万円
借入金額:1億4,850万円(年利2.3% 30年返済)
自己資金:約2,450万円

満室想定時77%稼働時
年間収入 1,200万円 924万円
ローン支払額 685万7,159円 685万7,159円
その他経費※1 248万7,400円 233万8,360円
差引収入=税引き前CF 265万5,441円 4万4,481円

※1.固定資産税・都市計画税、清掃・設備点検、水道光熱費、委託管理費など
(出典:野村不動産アーバンネット「投資シミュレーション」を基に作成)



満室想定の税引き前キャッシュフローはおよそ265万円です。仮に、税引き前のキャッシュフローが赤字にならない水準を試算すると、稼働率77%がギリギリのラインだとわかります。逆にいえば、空室率が23%までならキャッシュフロー上は耐えられるということです。

実際の空室状況、周辺の同様の物件の空室率を調べて比較すれば、検討に値するかどうかがわかるでしょう。たとえ購入時点では満室だったとしても、入居者の入れ替え時に一時的に空室になることもありますから、95%程度の稼働率で試算しておくのが無難かもしれません。

稼働率・空室率の他に、家賃水準を調整したシミュレーションも可能です。家賃設定が周辺相場よりも高めになっている場合には、入居者の入れ替え時に家賃収入が下がるおそれもあります。周辺相場と合わせた場合にどうなるかをチェックするのも有効です。このように設定条件を変えることによって、さまざまな観点から、物件の損益分岐点を見極めることができます。

実際の投資では、税金があります。投資家の個人属性、その他の所得との関係で税額が左右されるので、税引き後のキャッシュフローを試算することによって、本当の手取り額がわかるわけです。この場合、投資物件から得られる不動産所得以外の所得がない場合は、95%稼働時で約180万円(表2-1)、その他の所得が1,000万円ある場合には、税額が増えて手取り額は約126万円になります(表2-2)。

表2-1.税引き後のキャッシュフロー(CF)資産

物件・資金計画は表1と同様

満室想定時95%稼働時
年間収入 1,200万円 1,140万円
減価償却費 302万4,944円 302万4,944円
ローン金利返済額 337万8,986円 337万8,986円
その他経費※1 313万7,400円 310万5,000円
経費合計 954万1,330円 950万8,930円
不動産所得(C)
(A)-(B)
245万8,670円 189万1,070円
課税額合計(D)※2 39万9,397円 28万5,646円
税引き前CF(E) 265万5,441円 208万7,841円
税引き後CF(E)-(D)
(対象物件手取り額)
225万6,044円 180万2,195円

※1.固定資産税・都市計画税、清掃・設備点検、水道光熱費、委託管理費、青色申告特別控除など
※2.課税額合計は、復興税込みの所得税と住民税



表2-2.その他の課税所得が1,000万円の場合

投資前の税額:283万3,300円(所得税・住民税)
(所得税率:33.69%(復興税込) 住民税率:10%)

満室想定時95%稼働時
総合課税所得('C) 1,245万8,670円 1,189万1,070円
課税額合計('D) 390万7,567円 365万9,565円
投資前の税額(F) 283万3,300円 283万3,300円
投資後に増えた税額(G)
('D)-(F)
107万4,267円 82万6,265円
税引き前CF(E) 265万5,441円 208万7,841円
税引き後CF(E)-(G)
(最終手取り額)
158万1,174円 126万1,576円

(出典:表2-1、2-2ともに物件の条件は表1と同様)



家賃下落を加味した税引き後キャッシュフロー予測で、物件の「体力」がわかる

ここまでは単年度の状況を見ましたが、賃貸経営としては中長期の推移も見ておくべきです。表3は、30年間のキャッシュフロー推移を予測したシミュレーションをグラフ化したものです。1年目は満室想定時の家賃からスタートし、2~5年目までは家賃減率1%に設定。その後も、家賃が2年ごとに1%ずつ下がるものとして、税引き前と税引き後の推移を示しています。




家賃が下がるにつれて税引き前・税引き後ともに減少し、29年目で「キャッシュアウト」のほうが多くなる、つまり税引き後のキャッシュフローが赤字になってしまいます。これは修繕費を計算に入れていない場合ですから、仮に途中で何度か大きな修繕が発生すると、もっと早い段階でキャッシュアウトとなるかもしれません。シミュレーションでは、定期的に修繕費を計上する設定も可能です。

※なお、表3のグラフで税引き後CFが16年目に急に増えるのは、45歳で取得したオーナーが60歳で定年し、課税所得が減って所得税・住民税の負担が軽くなるため。オーナーの所得の状況によって、試算結果が変わってきます。

また、キャッシュフロー予測では、税引き後キャッシュフローの累積金額も算出します。この累積金額が初期投資の際に支払った自己資金を上回った時点までが「資金回収期間」です。何年で資金回収できるかも投資判断の指標の一つになるでしょう。キャッシュフローの累積金額は、次の売却シミュレーションの際にも使用します。



売却シミュレーションで、本当の投資成功かどうかがわかる

不動産投資は、売却時に税引き後キャッシュフローの累積金額(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)を合わせたトータルの収益(純利益)がプラスになって始めて成功といえるでしょう。

また、インカムゲインとキャピタルゲインを合計した純収益が投資した自己資金に占める割合はどのくらいか、その割合を年平均に換算した「自己資金年利回り」が何%になるかをチェックすることも重要です。自己資金が最終的にどのくらいの利回りで運用できたのかがわかります。これらの売却シミュレーションによって、出口を含めた投資判断ができるようになります。

税引き後キャッシュフローの累積金額と売却益を合計した総収益を1年単位で試算します。また、売却益については、購入時と同じ価格で売れた場合、値上がりした場合、値下がりした場合などの複数のシナリオを作ることも可能です。

たとえば、表4は前述の物件を6年後に売却した想定で、売却時の表面利回りが7%と8.1%の2パターンを試算しています。表面利回り7%は購入時の物件価格とほぼ横ばいです。しかし、6年間の家賃収入によって、借入金が減少し、累積のキャッシュフローも1200万円ほどになるため、売却後に1,800万円以上の純利益が出ます。自己資金年利回りは11.9%ですから、好成績といえるでしょう。



表4.売却シミュレーション

6年後に出口を迎えたと想定

売却水準利回り7%
(購入時と横ばい)
利回り8.1%
(約12%値下がり)
売却価格(A) 1億6,800万円 1億4,518万円
取得費(B)※ 1億4,370万円 1億4,369万円
譲渡費用(C) 504万円 438万円
売却益(A)-(B)-(C) 1,926万円 ▲289万円
譲渡税(D) 391万円 0万円
ローン残債(E) 1億2,638万円 1億2,638万円
売却後手取り(F)
(A)-(C)-(D)-(E)
3,266万円 1,442万円
自己資金投資額(G) 2,610万円 2,610万円
投資回収後収入
(H)←(F)-(G)
656万円 ▲1,168万円
6年間累積CF(I) 1,207万円 1,207万円
出口の総収益(J)
(H)+(I)
1,863万円 39万円
自己資金年利
(K)←(J)÷(G)÷6
11.90% 0.25%

※取得費は、購入価格(建物は減価償却後)と取得時諸費用の合計



表面利回り8.1%で売却した場合は、物件価格が約12%値下がりしたのと同じ状態です。それでも、わずかながら純利益が出ます。つまり、12%以上値下がりしなければ損はしないという「損益分岐点」がわかるわけです。

表面利回りだけではなく、こうしたさまざまな分析ツールを使うことによって、投資物件を選べるようになるのではないでしょうか。

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