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  • 不動産投資で失敗しない税金術

第13回 不動産経営における予実分析

執筆者:塩田 雅人2015年6月29日

不動産投資は、入居者から家賃をもらい、その入居者に快適に過ごしてもらうために修繕や清掃を行い、時には設備投資を行います。また、入居してもらうために家具を設置したり、不動産会社に仲介料を払うことで物件を入居者に紹介してもらいます。

このように、不動産投資は不動産賃貸料を効率よく受け取るための経営と言えます。経営はどのような業種であっても、まず予算を立てます。私が上場会社の会計監査をしていたときには、ある会社では毎月予算を立て、その予算と実績の乖離を分析していました。それも、数十人で徹夜してまで行っていました。

当時は、そこまでする必要があるのかと思っていましたが、経営にとって予算というものがどれだけ重要なものなのかということを表しています。もちろん、上場会社にとっての予算の重要性と不動産経営における予算の重要性が同レベルとは言いませんが、予算を作成し、それを分析している人とそうでない人とでは必ず差が生じてきます。

また、会社の経営が複雑であれば予算の作成も複雑になり、時間と労力が必要になりますが、不動産経営は売買を頻繁に行わない限り、経営はとてもシンプルなので予算作成もとても簡単に行うことができます。

今回は、この「予算」というものが不動産投資において、いかに重要であるかを確認し、今後のみなさんの不動産経営に活用していただければと思います。

予算の重要性

突然ですが、今期の利益、納税額はいくらになりそうですか?「今期はまだ始まったばかりなので...」と思われるかもしれませんが、予算を作成するタイミングは「期首」です。期末が見えてきてから予算を作成しても意味がありません。

また、不動産投資は突発的な収入、支出は少ないので、期首時点でも予算作成はとても容易です。5年後の予算も大きな誤差なく作成することができます。誤差が出にくい予算を作成できるということは、経営を行ううえでとても有効に活用できるということです。
しかし、どのように使えばいいのか、どう有効なのかわかりませんよね。

まず、予算を作る目的は、予算と実績の乖離を把握し、乖離の原因を分析して今後の経営に生かすためです。例えば、予算よりも実績の方が下振れした場合、どのくらい下振れているのか、またその原因を確認しましょう。

思ったよりも退去が多かったとすると、その想定していた退去件数(予算)が間違いなのか、それとも今回たまたま退去が多かっただけなのか。想定していた退去件数(予算)が間違っていたのだとすると、今後の予算は大きく変わってきます。

売上が予算よりも下振れした場合は、その原因を分析するようにしましょう。例えば、予算よりも空室が長く続いたことが原因であれば、なぜ空室が長く続いたのか調べてみましょう。現在は仲介料(広告料)を1ヵ月分支払っているが、調べてみると周辺では2ヵ月分支払っていることがわかったとします。そうであれば、仲介料を上げることも検討しましょう。空室が長く続いた原因が仲介料ではなく、部屋自体に原因があるのであればリフォームも考えなくてはなりません。原因を特定するのは難しい場合もありますが、管理会社などと相談しながら利益向上へむけて最善の策を検討しましょう。

このように予算と実績の乖離の分析をすると課題が見えてきます。そこでさらに原因を探っていくと、結果的に予算を作成している人とそうでない人とでは差が行動に表れてきます。

予算立てのほかの利用方法としては、「税金」です。ご存知の通り、不動産から得られた利益には、個人所有の場合は所得税、法人所有の場合は法人税が課されます。1,000万円の利益が出れば300万円ほどの税金が発生します。この納税は個人であれば3月15日、法人であれば期末から2ヵ月が期限となります。納税資金をしっかり準備しておかないといけません。

予算を立てることで今期の利益が把握でき、納税資金がわかれば、仮に今年大規模な修繕が発生したとしてもいくらまでであれば負担できるのか、判断することができます。

また、金融機関対策にも有効です。予算を立てておけば、今期・来期の利益がわかります。これを言い換えれば、金融機関へ提出する数字がわかるということです。ということは、今期が大幅に赤字であれば来期以降は融資を引くことが難しくなります。となれば、物件取得は今期中にしたいですね。また、今期が大幅な黒字であれば、来年以降融資を引きやすくなりますし、金利交渉もしやすくなります。金融機関と交渉する際は、「タイミング」がとても重要になってきますので計画的に行ってください。

このように、予算を立てることで、空室対策や資金繰り、さらには金融機関との交渉にまで効果を発揮します。

予算の作り方

それではどのようにして作成すればいいのでしょうか?予算立てにはエクセルなどを使うととても便利です。複数物件をお持ちの方は、物件ごとにシートを作成するとよいでしょう。

例えば、以下のように表を作成してみてください。これでほぼ予算は作成できます。あとは、実績数値を埋めていけば、未経過月の金額も自ずとある程度予想がついてきます。

科目 4月 5月 6月 ・・・ 3月 決算 合計
家賃
駐車場
自動販売機
売上合計
管理費
修繕費
広告費
水道光熱費
固都税
支払利息
その他
経費合計
税引前利益
税金
税引後利益

予算作成は、ほぼ説明がいらないくらい簡単です。それでいて活用方法は様々。空室対策、納税資金準備、金融機関対策、役員報酬の金額算定など有効に使える場面はたくさんあります。シンプルでかつ便利なものですので、ぜひ活用してください。

執筆者

塩田 雅人

塩田 雅人

不動産投資 専門税理士

不動産投資に関する税務をさまざまな角度(所得税・法人税・消費税・相続税など)から検討し、トータルでサポートを行う。個人所有物件の法人化や消費税の還付に精通。銀行との良好な関係を築き、顧問先の借り換え提案や金利交渉に力を発揮する。

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