2018年の収益不動産のポイントは「利回り・融資・民泊」
新たに不動産投資を始める人やアパートなどの収益不動産が増えているなか、2018年の投資用物件の市況はどうなっていくのでしょうか。2017年の経済・金融を中心とした不動産投資にかかわるニュースやトピックスを振り返り、マーケットの展望・ポイントを解説します。
「出口のない投資」に要注意
2017年に遭遇した事例には、教訓としておきたいこともありました。
購入する時は「買いやすい」のですが、売却ができない「出口のない投資」です。購入する時点で「出口戦略」を併せて考えられる物件を選ぶことが非常に重要であることを覚えておきましょう。
典型的なケースを2つ挙げます。
■ケース1 築古の鉄骨造アパート
以前に比べて、築年の古い収益不動産にも融資をしてくれる金融機関が増えています。しかし、こうした融資を活用して購入した物件の中には、買いかえや買い増しをしようとした際に、売却できない恐れが高いケースがあるのです。
ある金融機関では、ほとんどの金融機関では融資しない築30年超の鉄骨造のアパートに対しても、30年返済の融資をしてくれます。地方などの高利回りの物件なら、多少は金利が高くても机上の収支計算が合うため、購入する方も珍しくありません。
しかし、地方圏に位置している物件で、かつ耐用年数を超過する物件に融資する金融機関は一握りです。3年後、5年後などに売ろうと思ったときに、その物件に融資してくれる金融機関はありません。つまり、買い手が付かないのです。高い金利を払いながら、ずっと運用を続ける以外に選択肢がなくなってしまいます。
■ケース2 シェアハウス
一時のブームが去ったとはいえ、新たな賃貸マーケットを開いたシェアハウスへの注目度は高いようです。不動産会社が開発分譲している商品も出ています。新築分譲時は提携の融資が付き、サブリース(一括借り上げ)契約のため、土地活用や新規投資をするオーナーにとっては購入しやすく、魅力的に映ります。
ところが、そのようなシェアハウスの売却依頼を受けて現地調査に行き、ほとんど入居者がいないケースに一度ならず遭遇しました。サブリース契約期間はオーナーに賃料収入は入りますが、一定期間で契約が切れて継続されない仕組みになっていました。そうなってから慌てて売ろうとしても、空室だらけの物件を購入する投資家は見つからないのです。
シェアハウスは各部屋に水回り設備がないため、通常のアパートへの転用もできません。最近、このような事例をよく見かけるようになり、いずれ社会問題化するのではないかと危惧しています。
もちろん、稼働率の高い人気のシェアハウスもあります。成功すれば、通常の賃貸住宅よりも収益性は高くなります。分譲・運営事業者の良し悪しによって、大きな差があることに注意してください。
2018年は収益不動産の買い時か?
最後に2018年の不動産投資市場がどうなるかを考えてみましょう。
■東京五輪のあと
2019年になると、東京五輪関連の建築ブームが一服し、開発を一手に担っていたゼネコンの仕事も落ち着いてくるため、建築費も下がる可能性が出ています。
そうなると新築物件が多少買いやすくなるという見方もできるでしょう。もっとも、2019年10月に予定通り消費税率がアップするとすれば、駆け込み需要を当て込んだ売り出しも増えるかもしれません。
■2022年問題
1992年に施行された「生産緑地法」で宅地並み課税を免れていた都市農地が、2020年に30年の期限切れを迎えます。それまでの間に、農地が一斉に売り出されたり、賃貸住宅が建設されたりするため、「地価の暴落や賃料下落が進むのでは?」という説が出回っています。
この説については、いくつか疑問点もあります。現存する生産緑地は東京23区内でも山手線の外側周辺部にあり、アパート適地ではないエリアが多いこと。また、2017年4月に生産緑地法が一部改正されて、都市農地として存続できるような緩和策が打たれつつあること、などです。人口問題とも絡んで、ある程度の地価下落はあると思いますが、それほど大きな影響は出ないのではないでしょうか。
ちなみに、2017年12月14日に与党から出された「2018年度税制改正大綱」にも、生産緑地に関する新たな特例、猶予策などが盛り込まれました。
■融資引き締め問題
前ページで紹介したように、不動産投資に対する金融機関の融資が厳しくなっているのは事実です。ただ、日銀の金融緩和政策は、少なくとも2018年までは続くと予想されますから、低金利状態は変わらないでしょう。
また、融資姿勢が厳しくなったというのは、ここ数年の大幅に緩かった時期に比べた相対的な状況です。10年前と比べれば、投資初心者のサラリーマン向けに融資する金融機関は増えており、築古物件など融資対象となる物件のバリエーションも広がっています。新規に借りること自体が難しくなったわけではありません。
また、収益不動産の売り出し件数は増え、物件によっては価格交渉も可能になっています。豊富な選択肢の中から、自分に適した物件を吟味しながら投資できるようになっているといえるのではないでしょうか。2018年は、不動産投資にとって良好な環境にあると思います。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。