不動産投資の最新動向
2015/12/14

どうなる?2016年の不動産投資市場

2015年の不動産市場は「インバウンド投資」が席巻しました。一方で、価格上昇・利回り低下の傾向に変化が起きています。こうした動きを踏まえ、価格・利回り・融資環境など2016年はどうなるかを展望します。

「インバウンド投資」「民泊」「大型物流施設」が2015年のキーワード

2015年の不動産マーケットは、前年にも増して外国人投資家が市場を席巻しました。「インバウンド」というキーワードが、いろいろな分野で脚光を浴びましたが、不動産投資においてももちろん例外ではありません。

中国の景気悪化や株価下落などの影響で、中国系外国人による不動産購入はひところほどの勢いは見られませんが、引き続き外国人による不動産取引は続いています。また、"爆買い"の中国人旅行者に代表される外国人旅行者の勢いは衰えておらず、これらの波及効果で新たな賃貸需要も生まれています。

その一つである「民泊」も、2015年に注目を集めたキーワードでしょう。個人の家や住戸を宿泊施設として提供する「民泊」は、世界の旅行者に利用される民泊のマッチングサイト「Airbnb」が有名です。外国人旅行者の急増によるホテル不足の打開策、2020年東京五輪の宿泊受け皿として注目されています。

現状では、個人が無免許で宿泊業を行うと旅館業法に抵触しますが、国は民泊活用に前向きで、ルール作りも始まっています。羽田空港のある東京都大田区など、特定の自治体では、「民泊」を認める規制緩和の条例を定める動きが出ていますから、今後、徐々に普及していくのではないでしょうか。

2020年の東京五輪に向けた鉄道や道路網などのインフラ整備に加え、物流施設をめぐる動きも活発でした。なかでもインターネット通販の即日配送ニーズに応えるための大型物流施設の開発は、周辺地域へ大きなインパクトを与えています。これまで見向きもされなかった地域に、大型の物流施設ができることによって地価が上昇、そこで働く人々の賃貸需要が生まれ、関連サービス業などが増加するからです。


エリアによって利回り低下に歯止めがかかり、上昇に転じるケースも

投資向け不動産の価格相場を振り返ってみましょう。2013年前半から始まった「価格上昇/利回り低下」は、2015年の中頃まで大都市圏全体で続いていました。しかし、2015年の秋ごろから利回り低下に歯止めがかかったり、上昇に転じたりするエリアも出てきています。

図1をご覧ください。これは不動産投資専用サイト「ノムコム・プロ」に掲載された一棟マンションの表面利回りの推移を示したものです。東京都心5区や23区内の利回りはまだ右肩下がりの傾向が残っていますが、千葉・埼玉では横ばいに近くなっています。神奈川県では、都心に近い横浜・川崎エリアは横ばいで、その外側の湘南・県央・県西は上昇しています。つまり、郊外では価格が下がり始めているエリアもあるということです。

図2は同じくアパートの表面利回り推移です。こちらは東京都心5区でも横ばいになっています。明らかに上昇しているエリアはありませんが、全体的に横ばいに近い状態になっているようです。

一時は「物件価格の上昇はどこまで続くのか」という懸念もありました。しかし、投資商品である以上、キャッシュフローが回らなくなるほど利回りの低い物件は売れません。エリアや物件ごとに投資家の期待利回りがあり、おのずと歯止めがかかります。エリアによって、その水準に達しつつあるといえるでしょう。

次のページでは、資金調達など2016年の不動産投資環境を展望します>>

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ガイド:宮澤 大樹
(野村の仲介+ 資産コンサルティング部)

1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。

他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。