こうすれば上手くいく、不動産投資の資金調達
不動産投資をする際に、資金調達がスムーズにできるかどうかは重要なポイントの一つです。ローンはいくら組めるのか、自己資金はどのくらい用意すればいいのか…。資金調達にあたって検討が必要な項目を解説します。
「頭金は何割」というセオリーはない
借入可能額に自己資金を加えた金額が、購入可能額となります。住宅ローンの場合は「理想の頭金は購入価格の2割」といわれていますが、不動産投資の場合はこうした目安はありません。借入可能額と同じように、個別性が高いからです。
そのため、不動産投資を検討している方からは「全額ローンで買えないか」という相談をよく受けます。なるべく自己資金は使いたくない、万が一の時のために虎の子の現金を残しておきたい、2棟目以降の購入資金としてキープしておきたい、といった意向があるからです。

頭金と諸費用を合わせていくら用意すればいい?
確かに、以前はフルローン(物件価格の全額を借入するローン)を組めた時期もありました。現在でも物件によっては可能性がゼロではありません。ただ、最近の傾向としてはフルローンを組むことがかなり難しくなっています。不動産投資を初めて検討する会社員の場合は、物件価格の1~3割程度の頭金を用意してほしいという金融機関が増えています。頭金以外に、税金やローン保証料、仲介手数料などの諸費用として価格の7~8%程度かかります。
以上の点からすると、諸費用と頭金を含めた自己資金としては価格の2~4割程度は必要になるといえます。ただこの割合は、あくまでも物件の条件や金融機関の担保評価などから導き出したものです。この枠の範囲内で、実際にいくら自己資金を用意しておくべきか、いくらの頭金を支払えば安全な賃貸経営ができるかは、購入検討者によって変わってきます。どんな要素が関係してくるのかを次に検討してみましょう。
頭金の適正水準は、キャッシュフローや売りやすさに左右される
頭金をいくら入れるべきかの判断は、毎月のキャッシュフローがどうなるか、万が一売却が必要になった時に売却しやすいか(換金しやすいか)、などによって変わってきます。
まず、キャッシュフローは、家賃収入からローン返済や管理費等の諸経費を引いた手取り金額が十分に残るかどうか。これは物件の利回りや、借入金の割合とローン金利などによって左右されます。借入比率や金利水準が高いと、ほとんど手取り金額が残らず、キャッシュフローがプラスにならないかもしれません。その場合は、頭金を増やしたほうがいいといえます。
一方で、物件の利回りが高い場合は、頭金が少なくてもキャッシュフローがプラスになることもあるのです。キャッシュフローの観点からどのくらいの頭金が必要かは、詳しい収支シミュレーションをした上で検討する必要があります。

次に、売却のしやすさ(換金のしやすさ)です。価格が下がり気味の時に少ない頭金で買った場合、何年か後に売却しようとしたときの価格がローン残債を下回ってしまうおそれがあります。その場合、残債を下回った分の現金を入れて精算しないと売却できません。金融機関が抵当権を外してくれないからです。どの程度の頭金を入れておけば担保割れにならないかは物件によって異なりますが、頭金を多く入れておいたほうが、将来売却できないというリスクを減らすことにはなるでしょう。
では、頭金がたくさんあるほど安全なのでしょうか。実は、そうとも言えません。別の側面から見ると、リスクも発生するからです。
不動産投資に頭金をたくさん入れるということは、その半面、手元に残る現金が減るということです。万が一、急に現金が必要になったときに困る可能性があります。
投入した資金は、時間をかけて賃貸収入として回収していきます。しかし、前回の「投資シミュレーション」の記事で、諸費用を含めた投資資金の回収には長い期間がかかると指摘したように、その間、資金を"寝かせている"のと同じ状態になってしまうのです。
そこで、頭金を減らして、手持ち資金の一部を比較的現金化しやすい株や金融商品などで運用したり、いつでも引き出して使える預貯金として残しておいたり、他の方法で持っていたほうがいいかもしれません。そのバランスをどうするべきは、購入検討者の考え方次第です。購入する物件や融資条件によっても変わります。
また、借入が多いほど金利上昇時の返済負担は当然膨らみますが、投資用ローンの場合は金利が経費になり金利上昇部分がそのまま負担増になるわけではありません。このあたりも、収入を生まない住宅ローンとは異なるものと認識しておきましょう。
このように、不動産投資の資金調達の方法には、誰にでも当てはまる一般的なセオリーがないと言えます。検討するべき事項が非常に多岐に渡りますし、物件の条件、金融機関の融資姿勢によっても左右されます。個人ではなかなか正確な判断がしにくいところです。やはり、専門家と相談しながら進めていくのが賢明ではないでしょうか。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。