区分VS一棟、不動産投資の比較ポイント
不動産投資の入り口として、「まずは区分(ワンルームなど)」というケースは少なくありません。そこで今回は、区分物件のメリット・デメリットについて、一棟マンションなどと比較しながら紹介します。(2ページ目)
投資効率が高いのは、「区分」より「一棟」
前ページでは区分物件のメリットを中心に紹介しました。続いて、デメリットについても見ていきましょう。
図2は、区分マンションと一棟マンションの表面利回りの推移を示しています(投資物件情報サイト「ノムコム・プロ」掲載物件の利回り推移)。一般的に、一棟マンションに比べて、区分マンションのほうが利回りは低くなります。利回りが低いということは、つまり収益性が低いということです。
たとえば、総額500万円・表面利回り10%の中古ワンルームマンションを現金で購入したとします。想定家賃収入は、年間50万円です。出ていくお金は、建物の管理費・修繕費が12万円(1ヵ月1万円)、固定資産税が年間5万円、家賃収納代行などのために賃貸管理会社に2万円前後支払うとして、年間維持費が19万円ほどとなるでしょう。税引き前の手取りは31万円で利回りは6%程度となります。
さらに、所得税と住民税を合わせて30%の税金を払うと、手残りは年間22万円となり、月々2万円に達しません。投下資金500万円を回収するのに20年以上かかります。
しかも、これは入居者が居続けることが前提です。仮に1~2年ごとに入居者の入れ替えが発生すると、その度に原状回復費用、募集費用などがかかります。部屋が埋まるまでの賃料収入はゼロですから、2~3ヵ月の空室期間があると、費用を合わせて家賃5~6ヵ月分のマイナスです。ほとんど手残りがないか、赤字に転落する恐れがあります。現金で購入してもこの収支ですから、ローンを利用すると採算的にはかなり厳しいといえるでしょう。
このように、区分の物件は一棟マンションやアパートに比べて投資効率が低い上に、空室リスクが大きいといえます。
管理状況や売却価格のコントロールのしやすさが違う
区分物件を購入する場合の注意点は、もう一つあります。区分物件には、一つの建物に対して複数の所有者がいることです。建物・設備の管理運営については、複数いる区分所有者の話し合いで進めることになります(通常は、管理組合が作られ管理規約に基づいて総会で話し合って決め、管理の実務は管理会社に委託されます)。
「大規模修繕や建て替えなどの重要事項は区分所有者による多数決で決められる」と法律で定められています(※)。管理状況を改善したい、リノベーションをして付加価値を高めたいと思っても、自分一人では決められないのです。一棟マンションの場合は、オーナー自身の裁量でバリューアップするなど、自らコントロールすることができます。
また、管理組合と管理規約があり、定期的に総会が開かれて管理運営がきちんと行われているかどうかは重要です。ワンルーム業者が分譲した区分マンションの場合は、系列会社が管理受託をしているため、こうした形式は整っていることが多いでしょう。オーナーが総会に出席しなくても、ある程度はきちんと管理されていると期待されます。その意味では、管理の手間がかからないといえるでしょう。
ただ、ワンルームマンションの場合は、棟内の清掃やゴミ置き場、駐輪場などの整備が行き届いていないという指摘も少なくありません。これはオーナーが自分で住まないため、管理状態への関心が薄いからです。ファミリータイプの分譲マンションでは、所有者自身が住んでいる割合が多いため、居住環境が比較的良好に保たれる可能性が高くなります。管理状態の善し悪しは、賃借人の入居率に影響することがあります。
売却価格についても、区分マンションより一棟マンションのほうがコントロールしやすいといえます。区分マンションは、周辺の類似物件や同一マンション内の成約事例によって価格相場が決まり、その情報が比較的オープンになっていまるため、売主の希望価格が通りにくいといえます。一棟マンションは、道路一本隔てた隣にあっても評価が変わるほど個別性が高く、売買情報もオープンにされていないため、比較的売主の意向を反映しやすい面があります。つまり、出口における売却価格のコントロールがしやすいわけです。
※大規模修繕や建て替えなどの重要な事項を決める特別議決の場合は、組合員総数(区分所有者数)と議決権総数に対して、共に一定以上の割合で賛成することが必要になる。組合員(区分所有者)の人数は、1人の組合員が複数住戸を持っている場合、1つの住戸を複数の人が共有している場合、いずれも1人と数える。議決権は専有部分の床面積割合(=共用部分の持ち分割合)で決まる。
特別議決の例 ...... 大規模修繕=4分の3以上、建て替え=5分の4以上。
今回は、不動産投資における「区分物件」と「一棟物件」の観点で、メリット・デメリットを見てきました。区分は、価格が低く始めやすい半面、空室リスクと投資効率では分が悪いといえます。一棟は、元手や借り入れが大きくなりますが、投資効率・空室リスクについて区分よりも優れているでしょう。区分を複数持つ人もいれば、一棟だけという人もあります。どちらにも、メリットとデメリットがあり、どちらがよいかは、「投資」に対する考え方によっても判断が分かれるところでしょう。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。