海外の不動産投資の格言は、日本でも通用するか?
アメリカのカリスマ不動産投資家のロバート・アレンやドルフ・デ・ルースが記した格言の検証を通じて、日本の不動産投資マーケットを見てみましょう。また、日本の市場でも通用するか、応用できるかも考えます。
何かの選択で迷ったときは、一人で悩んでいるよりも、その道で成功した先達の知恵を借りるのが近道といわれます。不動産投資の世界では、海外、特にアメリカのカリスマ不動産投資家の格言が有名でしょう。今回は、それらが日本でも通用するのかを考えながら、日本の不動産投資マーケットについて考えてみます。
「不動産とは待ってから買うものではない。まず買ってから待つものだ」
これは『ロバート・アレンの大富豪への道--頭金なしでもできる新不動産投資戦略』(※1)に出てくる格言です。ロバート・アレンは、上記の原著『Nothing Down(頭金不要)』が全米で100万部のベストセラーになったカリスマ不動産投資家で、「億万長者請負人」とも呼ばれています。投資に積極的といわれるアメリカでも、不動産投資には躊躇する人が多いらしく、好き嫌いが分かれるそうです。しかし、ロバート・アレンは、冒頭の「不動産とは待ってから買うものではない。まず買ってから待つものだ」という格言に続いて「お金持ちになるための速くて確実な方法は、不動産投資である」(同書)と断言しています。
(※1)ロバート・G・アレン著/金森重樹監訳。東急エージェンシー発行。2007年)
この「待ってから買うものではない」という言葉には、ガイド自身も共感します。「待つ」ことは「機会損失」につながるからです。たとえば「今は価格が上昇傾向で利回りも下がっているから、価格が落ち着いて利回りが以前の水準に戻るまで待とう」という声をよく聞きます。しかし、いつ価格が下がり始めるのかは誰にも分かりません。
少なくとも東京都心部では、6年後の2020年東京五輪あたりまでは上昇トレンドが続く可能性が高いといわれています。価格が下がるまで待つとすると、投資の果実が何も得られない空白期間になるのです。6年後、価格が下がらない可能性もあります。また、価格が下がったとしても、金利が上がっていれば結局は買えないかもしれません。
これに対して、今すぐに不動産投資を始めれば、購入翌月から賃料収入が得られます。希望よりも少しくらい利回りが低いとしても、現在の超低金利でローンを借りれば、キャッシュフローはプラスになるでしょう。入居者の支払う賃料でローン返済が進み、純資産が自然に増えていきます。つまり、早く始めた分だけ資産形成の時期も早くなるわけです。そして賃貸運営をしながら売却に適したタイミングを待てば、値上がり益が得られる可能性もあるでしょう。
「掘り出し物がそこにある」
これもロバート・アレンの言葉で「場所と価格を問わず、掘り出し物は必ずある」(前掲書)という意味です。掘り出し物を見つける近道として紹介されているのは「抵当流れ(債務不履行で債権者に所有権が移った)」の物件や、個人的な切羽詰まった問題を抱えてすぐに手持ち物件を処分したい「投げ売り」の物件です。こうした物件を購入できれば、非常に有利になることは間違いありません。
アメリカでは、エンドユーザー(個人投資家)がエージェント(不動産営業をする資格者)と同じ情報をインターネットや新聞などから得られるオープンな市場が形成されています。ですから、買主自身の努力次第で、掘り出し物を見つけることも可能なのでしょう。
これに対して、日本では「不動産に掘り出し物はない」といわれます。「掘り出し物」を市場価格より大幅に安い物件、取引条件が買主に有利な物件と定義するなら、日本でも存在しないわけではありません。しかし、そうした物件の情報は、一般の個人投資家まで届かないことが多いのです。その理由は、日本の不動産投資市場が、アメリカのように個人投資家までオープンではなく、いわばブラックボックスのような面があるからです。

「アメリカの不動産投資情報サイトでは、物件の価格推移など詳細なデータがオープンになっている」(http://www.zillow.com/)
たとえば「抵当流れ」の物件は、金融機関や弁護士・税理士などを通じて、まずは不動産仲介会社に持ち込まれます。売却希望価格は市場価格に比べて安く、インターネットなどに物件情報が公開される前に取引が終わってしまうケースがほとんどです。ほかに相場より安い値が付くケースとして、不動産会社が売主で、決算間近で現金化を迫られている場合、があります。
しかし、不動産会社(宅建業者)が売主の場合、個人の買主に対しては2年間の瑕疵担保責任を負わなければなりません。また、一般的な不動産売買では、買主が融資を受けることを前提にしている場合、審査が通らず融資が受けられなかったときに、契約を白紙撤回する「ローン特約」を契約書に明記する必要があります。契約が流れてしまうリスクや、契約後にクレーム処理に手間取ったりするのを避けるため、「プロ(不動産業者など)限定で買い手を探す」ことになります。
ただし個人でも、キャッシュで買える資金力がある、事前に金融機関からの融資枠を確保して即決済ができるような人には、こうした情報が提供されることはあります。不動産仲介業者と取引経験があったり、物件探しの希望を伝えてあったということになりますから、アメリカの状況とは、異なりますね。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。