不動産投資の最新動向
2014/2/24

目的と物件種別で決まる「不動産投資の出口戦略」

不動産投資が成功したか否かは「出口」を確定しないとわからないといわれます。目的や投資物件によって、出口戦略はどう変わってくるのか、どのように考えればいいのかを解説します。

不動産投資では、入口、つまり物件を取得する際に「何を選ぶか」というだけでなく「いつ、どうやって売却するか」という出口戦略が大切であることは、以前にも解説しました。譲渡税の税率区分の変わり目(個人所有の場合)、大規模修繕の時期、キャッシュフローの転換点など、5年から10年単位でそのタイミングは訪れます。

上記は一般的な目安ですが、実は、投資の「目的」によっても出口の検討時期が変わってくるのです。そこで今回は、投資の目的を「資産形成」「相続対策」「節税対策」の3つに分けて解説しましょう。

1.資産形成が目的なら「中長期」の計画を

これから不動産投資を始めようという場合、また、始めたばかりで今後も継続して資産を増やしていくことが主な目的である場合は、中長期的な視点に立って考えることが大切です。

昨今のように、不動産市況が活性化して値上がりへの期待が大きい時期は、数年単位の短期間でキャピタルゲインを狙える場合もあります。ただ、資産形成に重点を置くなら、継続的なインカムゲインをメインに考えておいたほうがいいでしょう。購入する際には、10年・20年単位で収支計画を立て、その間にどのようにキャッシュフローが変わっていくかを想定して物件を選ぶべきです。

ただし、中長期的に保有することを想定していたとしても、借入れの返済が進み、ローン利息など申告する際に必要経費にできる部分が減って所得税が増えてしまったり、修繕費がかさんだり、キャッシュフローが悪化するなど、「保有に伴うリスク」に備える必要があります。

図1目的別の出口戦略の目安


したがって、5年くらいのサイクルで資産の運用状況や収支内容をチェックして、必要に応じて利益確定(売却)し、新しい資産(できればより良い資産)に組み換えていくことも必要でしょう。

2.相続対策は、「短期から中期」の出口戦略を

相続対策では、相続税を圧縮することが一番の大命題になります。相続が発生して当初の目的を達成した後、すぐに売却してしまう場合もありますから、短期的な対応も想定した出口戦略を立てておいたほうがいいでしょう。

所有者本人に特に健康の心配がない場合は、短期で組み換えずにそのまま持ち続けることもありますから、中期的な視点も必要です。とはいえ、相続対策を行ってから時間がたつと、市況の変化や税制改正により、必ずしも当初描いたシナリオ通りに行かないことも考えられます。常に状況に応じて対策の中身を見直していくことが大切です。したがって、長期的に固定させるよりも、短期~中期で考えておくべきでしょう。

二世代の家族のイメージ写真

相続対策を目的にするなら、短期~中期の出口戦略を


そのためには、相続人の人数に応じて、相続人にきちんと財産を分けやすい状態にしておくことも必要です。つまり分割対策です。

たとえば、郊外の土地に借金をして大型の新築マンションを建ててしまうケース。もしも、そのエリアが人口減少傾向で賃貸需要が先細りだと、空室率が高くなって収益が悪化し、売却額も低くなりますし、そもそも売却自体が今後は難しくなるかもしれません。相続人が複数いる場合には、1棟のマンションでは分割もできません。

そのため最近では、分割しやすく短期的にいつでも売却しやすい戸建て賃貸や、都心の区分マンションなどを複数持つことが注目されています。また、法人を設立し、法人で不動産を保有し、相続時には、株式での相続をすることも一般的になってきています。

3.所得税の節税対策は、短期決戦で効果を最大化

課税所得が1,800万円を超えると所得税率は40%になります。住民税と合わせると50%となり、所得の半分ちかくが税金で消えてしまいます。こうした所得税・住民税の節税のために不動産投資を活用する場合は、5年以内の短期で考えるのがもっとも効果的です。

たとえば、所得水準が高く3~5年で転職するケースが多い外資系サラリーマンなどがよく手がけているのが、築古の木造アパートを活用した方法です。耐用年数の過ぎた木造アパートは4年間(※)で一気に建物の減価償却をすることができますから、1年当たりの償却費を大きく計上することができます。それによって課税所得を圧縮して節税するわけです。

(※)法定耐用年数を経過した場合の償却期間は、法定耐用年数×20%。木造アパートは耐用年数が22年なので、22年×20%=4.4年(1年未満切り捨て)

ただし、4年で償却費はゼロになるので、そのまま所有していると必要経費がガクンと減って、所得税が一気に上がります。それまでに出口を検討しなければなりません。節税を続けるなら売却してまた築古アパートを購入するか、買い増すか、いずれかの選択になるでしょう。もしそのタイミングで会社を辞めて給与所得が一時的にゼロになれば、しばらく持ち続けてもいいかもしれません。

また、売却により譲渡益が発生する場合がありますが、所有期間5年以下の短期譲渡では39%の譲渡税がかかり、5年超でも20%の譲渡税かかる(個人の場合)ため、減価償却で節税した効果がかなり目減りしてしまいます。それを防ぐために不動産管理会社を作り、譲渡益が出ないように建物だけを法人に移転するなど、いくつかの方法があります。

次ページでは、物件種別による出口戦略の違いを紹介します>>

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ガイド:宮澤 大樹
(野村の仲介+ 資産コンサルティング部)

1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。

他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。