投資不動産の価格動向の変化で「出口戦略」も多様化
不動産投資は、物件を買う時、そして運用中も、出口(売却)を意識することが大事といわれます。相場動向のみならず、建物の状態や空室率なども、売却価格の変動要因となるからです。価格相場や融資環境が変化するなかで、利益を最大化する「出口戦略」の考え方を、従来との比較を中心に解説していきます。
出口戦略に有利な物件選びのポイント
出口を想定した物件選びで重要なのは、次のようなポイントです。
■1.なるべく築年数の新しい物件を購入する
買い手の多くは融資を利用します。法定耐用年数が長く残っている物件のほうが長期融資を組みやすく、キャッシュフローも良くなります。買い手としては、なるべく長期の融資を組める物件を選びたいわけです。法定耐用年数は図2の通りです。
金融機関の多くは、法定耐用年数をもとに返済期間の上限を決めています。メガバンクでは「最長返済期間=法定耐用年数-築年数=残存耐用年数」です。地方銀行や信用金庫では、これにプラス5~10年の余裕をもたせているケースもあります。
■2.国の政策に沿ったエリアに投資する
インフラの整備や大型再開発の対象エリアを選び、外国人就労者の拡大政策などに対応したターゲット設定をすることによって、長期的な賃貸ニーズを期待できます。将来的に、価格が下がる可能性も低くなるでしょう。
■3.磨けば光る物件を選ぶ
外観や室内が汚くて空室だらけの物件は、なかなか投資する気にはならないでしょう。しかし、なかには、管理運営がずさんであったり、デザインの問題や手をかけるべき箇所を怠ったことが要因で入居者が集まっていないケースもあります。ターゲットに合わせたリフォームをして、適切に募集活動をすることで満室にできた例は少なくありません。
こうした物件を安く買って、満室稼働にすれば短期で売却益を得ることもできるでしょう。ただし、築年が古いと融資が受けにくいため、自己資金を少し多めに準備したり、サブリースをつけたりして融資を受けやすくする対策なども、あわせて必要になります。
購入後にもできる、出口に向けた対策
購入時に出口(売却)を想定するだけではありません。買ったあと、賃貸経営中の物件でも、出口に向けた改善、より高く売却するための対策を取ることができます。
■1.空室率を下げる
買い手は空室率の高い物件を避ける傾向にあります。したがって、高い稼働率を維持することが大切です。
空室が増えたからといって、家賃を下げるのはあまりお勧めできません。家賃収入が下がれば、利回りが下がり、結果として売却価格の下落を招くからです。家賃値下げではなく、敷金礼金などの初期費用の値引き、フリーレント期間の設定などが有効です。売却を前提とすれば、家賃は相場より下げないことが賢明でしょう。
■2.収益力を高め、利回りをアップする
収入を増やす方法として、家賃の値上げは簡単ではありません。安易な家賃値上げは、空室を増やすおそれがあります。それを防ぎつつ収益力を高めるには、家賃以外の収入源をつくることが考えられます。
たとえば、太陽光発電システムを導入して売電収入を得る、レンタル収納スペースやバイク置き場を設置して使用料を得る、などが挙げられます。いずれも屋根や敷地のデッドスペースを活用して収益化するアイデアです。
それほど高い収入は期待できないと思うかもしれません。しかし、月に3~4万円、年間で40~50万円も増えれば、それなりに売却価格を高めることにつながります。たとえば、表面利回り6%の物件で、年間収入が48万円増えれば、800万円の価格アップを狙うこともできます。
こうした、いわば副収入について、物件広告の利回り表示に反映させてアピールするには、安定的な収入となっている必要があります。月額使用料などの場合は、周辺相場を調べて見合った額に定め、定期的に収入を得ていることを証明できるようにしておきましょう。
収入源の種類や安定度などによっては、広告の表示利回りに含めることができない場合もあります。それでも、似た条件の物件を比べた際のプラスアルファとして検討してもらえるでしょう。
現在の融資環境や価格動向においては、出口のタイミングは柔軟に考えられるようになっています。いつでも、売却したときに利益が残るように収益力を高める対策を続けることが、これまで以上に重要です。そのためには、常にマーケットの最新情報や収益アップのアドバイスを得られるよう、各分野の専門家とコミュニケーションをとっておくことが大切です。
新着記事一覧
1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。