上昇局面にあった都心の不動産市場は、2022年以降の急激な円安により、海外資金の流入や富裕層需要の高まりを促し、過去水準を大きく更新しています。この円安の継続は、市場要因もあるものの、現政権が輸出企業やインバウンドを意識し、急激な円高転換を志向しないスタンスであることも背景にあります。日銀は約30年ぶりの水準にまで利上げしましたが、日米金利差の大きさや構造的な資本流出入の差もあり、期待されたほど為替は是正されませんでした。結果として、日本の不動産は外貨建てで見た割安感が維持され、海外マネーの流入が継続している状態です。一方で、外国人による不動産取得に対しては一定の規制をかける方針が検討されており、購入者の国籍も含めた登記情報のデータベース化が急速に進んでいます。現在の市場は「規制ゼロ」の状態を前提としており、今後の動きに注目が集まっています。
円安は、日経平均の高騰にも大きく作用しています。円安は輸出企業の収益を押し上げる形で株価を高止まりさせ、結果的に富裕層や投資家の含み益は拡大。相対的に円の価値が下がっていることから、その一部が実物資産である不動産へと再配分され、価格の上昇に一役買っています。一方で、利上げによる住宅ローン負担の増加は実需層には一部影響が出ているようです。当店への問合せ状況では、政策金利が0.75%に上がった昨年12月以降、購入問合せが前年比を上回っており、変動金利が上昇する前に購入しようとする動きが出ているとみられています。富裕層主導による価格の上昇は、裾野の需要を縮小させつつあり、需要が「二層構造」へ転換する流れがうかがえます。
不動産価格を押し上げているもう一つの要因が、建築費の高騰による供給数の減少です。以前から供給数は減少傾向にありましたが、近年の資材価格や人件費の上昇により新築マンションの採算は厳しさを増し、供給はさらに抑制傾向が続いています。デベロッパーは高価格帯へのシフトや供給時期の調整を進め、市場に出る物件は限定的となり、その結果、需要は中古市場へ流入し、既存ストックの価格も下がりにくい状況が形成されています。利上げ局面であっても価格が大きく崩れないのは、海外投資家や富裕層の需要の強さだけではなく、供給の絞り込みによる影響も大きく作用しています。結果的に、不動産価格は下がりにくい構造が強まっています。
円安による海外資金の流入、株高を背景とした富裕層マネーの再配分、そして建築費高騰による供給数の減少。現在の不動産市場は、大きくはこの3つの要因によって価格が維持されています。裏を返せば、いずれか一つでも前提が崩れれば、市場のバランスは変化する可能性があります。為替の反転、株価の調整、あるいは供給再開といった局面では、需要の減速が顕在化する可能性もあります。また金利の上昇はこのすべてに影響を及ぼす可能性もあり、だからこそ重要なのは、「市場が強いうちにどう動くか」という視点です。現状の高値を活かすには、こうしたリスクを踏まえた“先手売り”が有効です。不動産の専門家に相談しながら、変化に強い戦略を立てることが重要です。