不動産コラム vol.70
与党3党の2003年税制改正大綱が決定されました。当面の課題として「デフレ不況の脱却」のため、企業の研究開発・投資減税や土地・証券関連減税などを拡充し、相続・贈与税の軽減など減税策を盛り込んでいます。また同時に将来の財政健全性を維持する立場から所得税の配偶者特別控除原則廃止など個人の負担増を中心とした増税路線が明確化されました。
法案の改正スケジュールですが与党大綱の決定を受けた政府は、来年1月に召集の通常国会に改正法案を提出審議後、3月末の成立の予定です。
政策減税として転勤で引っ越した人が再び戻った場合、住宅ローン控除の再適用を認める改正も盛り込まれました。現在はローンを組んで住宅を購入後、家族全員で転居し、その後再入居してもローン控除は受けられません。これを改め再入居年以後の残りの期間が減税対象になります。(再入居年に当該住宅を賃貸していた場合には当該入居年の翌年以後の各適用年に適用)適用は平成15年4月1日以後に居住しなくなった場合に適用されます。
相続税・贈与税の見直しは新たな制度が創設されています。親から子への資産移転を促進し、住宅投資や消費を刺激する狙いから、相続・贈与の一体化の方式「相続時精算課税制度(仮称)」の創設が決まりました。65歳以上の親から20歳以上の子に生前贈与する場合、生前贈与の2500万円までを非課税とし、それを上回る贈与には一律20%で課税。その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計価額に基づく相続税額から既に支払った「贈与税」を控除することにより精算することになります。
また、住宅の購入を目的とする資金の贈与「住宅取得資金等に係る相続時精算制度(仮称)」は、平成17年12月31日までの時限措置として非課税枠がさらに1000万円上乗せされ3500万円まで引き上げられます。現行制度では550万円(H17.12.31をもって廃止)なので、大幅な拡充となります。この特例では贈与者は65歳未満の親でも適用が可で、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に贈与により取得した住宅資金等について適用されます。対象家屋は新築又は築20年以内(耐火建築物25年以内)、床面積50㎡以上、増改築は100万円以上の工事費用等一定の要件があります。
相続税の基礎控除である「5000万円+1000万円x法定相続人数」の額は現行のままとなっています。相続税の最高税率70%から50%、相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産に係る贈与税率も70%から50%へと引き下げ、税率区分も多少緩やかになります。むしろ相続税額の2割加算制度について孫養子が追加になったことのほうが影響は大きいと思われます。
相続対策として活用されている生命保険に関する権利の評価(現行の評価は、「払込保険料×70%―保険金×2%」)は廃止となり、原則としてこの契約に係る解約返戻金により評価することとなりますので注意が必要です。