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不動産コラム vol.62

建物のコンバージョン-都市再生と循環型社会-

最近マスコミで話題になります2003年問題の有力な処方箋の一つとしてにわかに注目され始めのが、「コンバージョン」です。この手法の導入により不良債権処理促進の効果が期待され、かつ政府の掲げる「都市再生」問題の解決にも資するというものです。

コンバージョンconversionを直訳しますと「転換、変換、(手続の)移行」ですが、既存建物の中で物理的な耐久性を残しながらも競争力を失った業務ビル等を改修し、用途を住宅等に変更することにより蘇生し、既存ストックの改善を図るものです。
すなわち建物の利用目的を変えてしまう「建物の用途転用」です。

ご存知のように2003年問題は80年代に計画されたビルや旧国鉄用地跡に新ビル建設や建て替えのビルの完成が03年に集中し、東京23区で220万㎡超(=新宿副都心がもう一つ出現する規模、02年122万㎡、04年73万㎡)ものオフィスビルが新たに完成。その影響でビルの需給が崩れ都心周辺部の既存中小ビルを中心に空室率が上昇し、結果、賃貸料や地価の下落により新たな不良債権の発生につながると危惧される問題です。(PC通信146号参照)

ここ数年不良債権の最終処理が「緊急の課題」とされていますが、不良債権が単に銀行のバランスシートから落ちれば問題が解決するのではありません。不良資産の新しい利用法により優良とならないまでも普通の資産とならない限り、不良債権問題の真の解決はあり得ないわけです。その意味で古いビルやバブル期に建設された都心部における中小ビルを中心とした過剰在庫、低稼働率等不良資産化した商業用資産を有効利用することは、都市再生策の重要な呼び水として期待されるものです。

さて、本題のコンバージョンですが、介護保険制度導入前後にも寮社宅から老健施設への転用がありました。今回は主に賃貸オフィスから賃貸住宅への事業形態の変更と考えられますが、オフィス兼住宅、SOHOなどの需要も多いと思われます。 事業採算性の点で分譲住宅への変更も考えられます。

オフィスビルから共同住宅(区分所有)にコンバージョンする際の主な課題として次のようなものがあります。
・建築面:既存不適格問題、接道条件、採光、消防用設備関係、避難階段、内装制限等々。
・税務面:固定資産税課税上の土地評価は従前の商業用で高い?
・エリア:コンバージョンが実際に有効になるような地域(都心部)は限定される。
・コスト合理性:少ない投資で利用価値の高い資産に生まれ変わらせることができるか?
 行政では千代田区・台東区では定住促進の為の「既存ストック住宅転用助成制度」あり。

そして単に建物の用途転用だけにとどまらず、これまで「米国の2分の1、欧州の4分の1の寿命」といわれる日本の住宅もこれまでのスクラップアンドビルドの繰り返しではなく、今後は既存資産を有効に活用していくうえで、また環境負荷を削減する循環型社会といった観点からも重要になります。更に地域再生の方法として地域全体の再開発の有効利用を視野に入れながら既存建築物・敷地の暫定利用を有効に行い、地域の活性化を図ること考えられます。既に欧米では都市空洞化対策として実践されているということです。

住宅投資は新築住宅年150万戸の時代から中古流通、リフォームを含めて大きく変化していく過程にあります。今後、ライフプランの考え方もますます多様化個性化し「どんな家を建てるか?」から「どこに住むか?どう住むか?」へ移行していきます。職住近接重視層を取り込める魅力あるコンバージョンができるか、今後一つの建築的テーマとなりそうです。


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