不動産コラム vol.53
このたび公表された国交省の2002年版首都圏白書によりますと、東京都心部への人口の回帰が鮮明になってきました。 東京都区部においては転入者数、転出者数ともピーク時には年間60 万人を超えていましたが、その後、転入、転出ともに減少を続け、近年は転入、転出とも30万人台と移動規模は縮小してきました。その間、常に転出が転入を上回る転出超過の状態で推移していたため、東京都区部の人口は減少していました。
転入超過に転じた要因としては、結婚や出産をきっかけに郊外へ転出していた20代後半-30代後半の世代が都区部にとどまる傾向にあるといわれています。 すなわち都心回帰現象に拍車をかけているのが20代、30代の「第二次ベビーブーム世代」といわれる人たちで、その世代が子供をもつようになっているからではないかというものです。
しかしながら、6/7公表の厚生労働省・01年の人口動態統計を見ますと、必ずしもそうとも言いきれないようです。1人の女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)は前年より0.03ポイント下がって1.33(なかでも東京1.00、神奈川1.22、埼玉1.24、千葉1.24と平均を大幅に下回る)となり、過去最低(99年の1.34)を更新したからです。
また、もう一つの背景には価格横ばい・面積拡大の分譲マンションとワンルームを中心とした賃貸マンションの増加で、「若い世帯の都心居住の受け皿が広がっている」のが大きな要因であることは間違いありません。
マンション供給戸数は二、三年先まで高い水準で推移するのは確実と見られますが、結局は「都心回帰現象は経済の微妙なバランスの上にあり、景気に左右される部分が大きい」との指摘もあります。