我が家にとって二人目(長男)の誕生。
当然ながら、それは今年一番のハッピーなニュースだった。
でも、まだ二歳と少しの長女にとってはかなり複雑な出来事だったようだ。
予定より三週間も出産が早まったこともあり、家はバタバタ。
それもその筈で、実は妻はまだ自分が幼い頃に母親を病気で亡くしていた。
お義父さんが高齢ということもあり、妻の実家からのサポートは難しい。
そうかと言って今だ共働きでバリバリ働いている自分の実家の両親にそうそう甘える訳にもいかなかった。
もちろん、それは長女が生まれた時も同じだったが。
しかし、前回と今回では決定的に違うことが一つあった。長女の存在だ。
妻と長男が数日の入院を終え我が家に帰って来た。
当初、やっと母親との時間が取り戻せたとホッと安堵の表情を見せていた娘。
が、なにせ生まれたばかりの乳飲み子を抱えた妻だ。
おむつ交換やら入浴など、男の自分でもできることは可能な限り手助けしているつもりだが、授乳をはじめ、やはり母親にしかできないことの方が圧倒的に多い。
結局、妻はほとんど下の子に付きっきり。
もちろん、自分は一家の大黒柱として平日は朝から晩まで会社勤めの日々だ。
やはり、長女は相当な寂しさを感じていた様だ。
決して親バカになって自慢する訳ではないが、これまでそうそう泣き言やワガママを言ってこなかった娘。
いつでも、どこでも、いつも周りにいる人達をその笑顔で幸せにしてくれていた。
それが、長男が生まれてからというもの毎日顔をクシャクシャにして泣きじゃくる日々。
そのまだまだ小さいハートで、毎日一生懸命我慢していたのだと、その時になって初めて知った。
「ごめん。本当にごめんね……」
娘の事で泣いたのは、生まれてきてくれたそのときに、あまりの嬉しさに涙を流して以来だった。
娘をギュッと抱きしめた。
普段涙を見せなかった自分が泣いていることに娘は少々ビックリしていたように思えた。
そんな時だった。
「パパ……。大丈夫よ。大丈夫よ」
まさか、まだ二歳そこそこの娘の口からそんな言葉が出てくるとは思いもよらなかった。
自分の事を思いやってくれているというその言葉はもちろんだが、今の我が家の状況を彼女なりに理解し、そしてそれを必死で受け入れようとしているのだ。
親の知らぬ間に我が子はこんなにも成長していた。
それからの長女は、以前の彼女の戻ったようだった。
ただ、妻と長男はまだ外に出歩けるような状態ではない為、しばらくの間日中は必然的に「家の中」という空間だけでしか遊ぶことはできない。
が、今の彼女にとってはそんなことは些細な問題だ。
子供たちの今後も成長の事も考え購入した我が家。
フローリング、壁、クローゼット、バルコニー全てが彼女の遊び場だ。
愛すべき娘、ゆくゆくは長男の良き遊び相手としてもこれからも一緒に月日を重ねて行きたいと思う。