第2回「ありがとう、わたしの家」キャンペーン 入賞エピソード発表!

準グランプリ

しょっぱいうどんが教えてくれたこと(ひろかなママさん)

結婚したら 一生転勤が付いて回るけど それでもいい?

プロポーズの後にさらっと言われたその言葉。 
ついこの間まですっかり忘れていた。

今や結婚7年目の我が家。
5歳と3歳やんちゃ盛り食べ盛りいたずら盛りの男の子が2人。
長男がやっと一人で歩くようになった頃に次男を授かったので
一息つく間もなく駆け抜けたようなこの7年だった。
この4月から次男もやっと幼稚園。
ようやく自分の時間も少しは持てるのかなと、この時を指折り待っていた私。
待ちわびた入園までいよいよあと少し・・・

そんな時、にわかに転勤の話が出てきた。
それも今度の候補地は海外。
海外赴任に関しては夫自ら希望しての事だけに、応援したいし力になりたい。
いつか挑戦したいと打ち明けられたら
その時は全力で背中を押そうと決めていたのに・・・
実際 海外での生活なんて不安を通り越して恐怖でしかない私。
実際問題海外なんて新婚旅行で一度行ったきり。
英語も学生の頃試験前の一夜漬けで何とか乗り切ってきたレベル。
それに何より小さな子供たちもいる。
協力どころか 重荷になってしまうのではないか。

転勤の話はまだ本決まりではないとはいえ、遅かれ早かれ回ってくる運命なのだ。
誰にも言えない弱音のような悩みを抱えていた時
私はインフルエンザにかかり 3日間寝込んだ。

狭い家の中に隔離室として締め切られた和室。
そこに一人布団を敷いて寝込んでいたのだが、
襖一枚で隔離しても声や物音は丸聞こえだった。

夫が何かを探してキッチンに戸棚をかたっぱしから開け閉めする音
幼稚園での一日の出来事を一生懸命説明する長男の声
飲み物をこぼしたとさわぐ次男の泣き声。

高熱にうなされながら どうにか眠ろうと努めても 気になって一睡もできない。
しばらくして 隔離された和室の襖の隙間から 紙が出てきた。
長男がお見舞いの手紙を書いてくれたのだった。

それは大きなカレンダーの裏に書かれた家族が笑う絵。
綺麗な赤い太陽と 大きな家の隣で みんな楽しそうに笑っていた。

少し前まで ぐちゃぐちゃに書きなぐることしかできなかった息子は
いつの間にこんなに上手に書ける様になったんだろう。
私は息子の優しさと成長がとても嬉しく感じた反面、
忙しさにかまけて息子の成長を見逃していたのでは、と反省の気持ちも生まれた。 
襖の向こうの騒がしい日常を聞きながら、
私は転勤後の生活の不安や子供への反省や体の節々の痛み、
浮かんでは消えていく様々な思いと闘いながら天井を眺めていた。

その夜夫が作ってくれたうどんは加熱不足で野菜がとにかく固くしょっぱかった。
子供たちも苦笑いだったに違いない。でも不思議と体がほっとした。

そのうどんを食べた時、何故か私にはこの家族の将来が少し見えた気がした。

住む場所がどこであれ、家族がいて 温かい食卓があること。
それが我が家なのだ。

この2人の息子たちは きっとどこへ行っても今と同じように
おもちゃを取り合っては喧嘩し、走り回っては親に怒られ、
お腹がすけばご飯を食べ、眠たくなったら眠る。

何も不安に思うことはない。
しょっぱくともうどんはうどん。
しっかりと私の栄養となり体を回復させてくれたように、
私はどこへ行っても肝っ玉母さんとして美味しい食卓のある家を守るのだ。

父親の働く後ろ姿は太く大きな大黒柱となり、
息子たちの心にしっかりと刻まれていくと信じている。
そこに思い出や経験を詰め込んだ自分たちの部屋を作っていけばいい。
本当の家はきっと、心の中にできるのだ。

今でも不思議なのだが、しょっぱいうどんがそんなことを私に教えてくれた気がした。
ありがとう。

家族が集う家に この先も一つでも多くの笑顔が咲きますように。
子供たちにとって 玄関を開けるのが楽しくなるような家でありますように。

閉じる
Copyright (C) Nomura Estate Solutions Co.,Ltd. All rights reserved.