夜10時半。「もう寝たかな?」とソッと見に行くと、果たせるかな2人はグッスリと寝入っており、その上、腕と腕とを重ねています。思わず、妻と顔を見合わせました。昨年の夏、長男と次男の娘たち(当時、小学2年と幼稚園年長組)が、初めてわが家に「お泊り」をした夜のことです。
それまで2人は、お絵かきや人形遊び、夕食後は花火をして遊んでいました。そして、最後は「カラオケ」です。スマホからバック音楽を取り、1人がマイクで歌うと、片方がタンバリンを叩きながら踊るという思いもかけぬ展開に、妻と腹を抱えました。その後、2人だけで入浴の後は「おやすみなさい」と言って、2人だけにしました。しばらくおしゃべりをしていたようですが、やや経って静かになったのです。寝姿を見て「やはり、従姉妹だなあ」と嬉しさが込み上げました。
一昨年の夏休みは、私と妻がそれぞれの最寄駅で嫁さんから娘を預かり、八景島シーパラダイスに2人を連れて行きました。親抜きでじじばばがお相手です。長男の娘は2つ年上だけに、お姉さんぶりを発揮して何くれとなく世話を焼き、それはほほえましいことでした。これも近くに住んでいるからこそできること、としみじみ思ったことです。
長男と次男の家は、わが家を中間に夫々車で10分余りの近場です。私たちは極めて恵まれた環境と言っていいでしょう。かねて、子供たちが独立したら出来るだけ近くに、いわば、〝スープの冷めない距離〟に、というのが私と妻の希望で、息子たちも同感でした。
わが家は、JR大船駅から横浜方面へ徒歩10分余りの横浜市栄区。長男は結婚後、同じ栄区で、わが家から歩いて15分ほどの公団に住んでいましたが、6年前に鎌倉市(台)にマンションを購入して今日に到っています。先に結婚した次男が、近くに適当な家が見つからず、車で30分は優にかかる金沢区の賃貸マンションを決めた時、妻は少しさみしそうでした。しかし、長女の誕生を機会に隣の戸塚区に家を建てて、グンと近くなったのでゴキゲンです。もう7年経ち、男子も誕生しました。
「近居」のメリットは、何と言っても「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)が密になることでしょう。ITが発達した世の中ですが、やはり、百聞は一見にしかず、実際に、この目で見たり会ってみないとよく分からないことがあります。近くだと直ぐ相談ができるし、具合の悪い時なども容易に助け合えます。思い出すのは、6年前の東日本大震災の時です。
相当な揺れで、当時、長男の住いは11階で娘も小さかったので、それは心配でしたが、電話は通じない。思い切って、揺れが落ち着いた頃を見計らい、歩いて行きました。エレベーターも動かないので階段を登りました。高い階だけに揺れも強かったようです。部屋はタンスが倒れて足の踏み場もなく、嫁と2歳の娘は片隅でうずくまっていましたが、無事で、心から安堵しました。その後、走り始めたバスで戸塚の次男宅へ行きました。こっちは2階建て、幸い、大した被害はありませんでした。嫁たちは「あの時は本当に力強かった」と、今でも言ってくれます。近かったからこそ出来たことです。
孫たちの行事に手軽に参加できるのも嬉しいことです。お宮参りやお節句、七五三お祝いなどは当然ですが、幼稚園・小学校ともなると、入園(学)式、運動会、学芸会、音楽会など数多くの行事があります。〝サンデー毎日〟だし、何しろ近い所です。妻から「ほどほどにしてよ」と言われながらも、いそいそと出かけます。現役時代、忙しさにかまけて息子たちの入学式や運動会に満足に行けなかった罪ほろぼしの気持もあるのです。とは言え、今年の春は、次男の娘の卒園式と入学式、息子の入園式など目白押しで、老体にはすこし堪えました!
一方、息子夫婦・孫たちも、私や妻の誕生日など、何かというとわが家に集まって祝ってくれます。嬉しいことです。昨年の秋は、私の喜寿をレストランの一室を借り切り、全員で盛大に祝ってくれました。わが家から往復マイクロバスで、車内はそれは賑やかなことでした。孫たちからの、お絵かきの入ったメッセージのプレゼントはとりわけ嬉しく、至福のひとときでした。
そう言えば、昨夏「お泊り」をした後、孫娘たちは1泊では物足りなかったらしく、「次は2日泊まりたい」と言っていました。はてさて今年はどうなるか?
いたずらざかりの孫たちの「2泊3日」に、じじばばの体力が持つだろうか?些か心配をしているところです。