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娘と現代版「スープの冷めない距離」

田舎の恵留美須 さん

妻の携帯が鈍い唸り声を発している。
「もし、もぉぅし」
相手が中1の孫娘と分かっているせいか、返事がやけに明るい。
「……………」
「何が、食べたいの?」
「……………」
「分かった。すぐそっちへ行くからね」
どうやら孫娘からランチのお誘いがあったようだ。妻の話では、お誘いは受けても勘定はいつもこっち持ちで、「娘はがめつい」とこぼしてはいるが、皮肉たっぷりに「ジジイが払うから、オレも誘え」と挑発すると、「ヤキモチ焼くんじゃないの」と軽く受け流されるだけで、孫娘2人と娘、女4人のランチが楽しくて仕方がないといった様子である。
そんな日の私はというと、朝の残りのミソ汁にご飯を入れて煮込み、タマゴでとじただけのおじやを作っての一人ランチとなるのだが、それでも何故か心嬉しいのである。
娘夫婦は我が家から車で7、8分のところに住んでいる。この距離感は、「じじばば保育園」での子守はもちろん、なにかあったらすぐに駆けつけられるという意味で現代版「スープの冷めない距離」に違いない。いつだったか、試しに妻に聞いたことがある。
「オレにもしものことがあったら、娘が面倒見てくれるかな?」
その答は実につれないものだった。
「娘は『お母さん、絶対、お父さんより先に逝かないでよ』と言っていたわ」
そういえば、娘に一番手がかかる時に、仕事だ、付き合いだといって酒ばかり飲んでいて、父親らしいことをしてやったという記憶が飛んでしまっているのだから、やはりそのツケが回っているのかと思わないでもないが、それでも何故か心強いのである。
我が家は、おととしが風呂場と脱衣場、去年がダイニングキッチンとリフォームが相次いだ。夫婦二人だけの生活に戻り、将来、この家は誰が継いでくれるのかという不安と虎の子の老後資金は使わずに残してやれるものなら残してやるのが親心ではないかという葛藤の中での決断だったが、自動でお湯はりをしてくれる風呂は便利だし、L字型のシステムキッチンを二列型にした対面式カウンターは夫婦の会話を弾ませてくれるし、何といっても断熱材をしっかり入れて隙間風が気にならなくなったダイニングルームはいうことなしの快適空間になっている。即今、当処、自己。いま、ここ、自分の為すべきことをやる。明日のことを思い悩まず、今をありのままに生きて幸せになる。「家」は「継ぐ」ものではなく、「住む」ものだと考えると何と楽になることか。子供と孫が現代版「スープの冷めない距離」にいて、「してもらう」より「してやれる」喜びを味わう日々。私には、娘が近くに住んでいることが何よりも心嬉しくて心強いのである。

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