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プロに聞く!不動産投資コラム 大家さん税理士が指南! 渡邊 浩滋氏(わたなべ こうじ)

第6回 キャッシュが残るのはどっち?減価償却は定額法か定率法か

2016年07月11日
平成28年度の税制改正によって、「平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物については、定率法を廃止し、定額法のみの方法による」ことが決定しました。

建物については、平成10年4月以降に取得されるものはすべて定額法になっていましたが、これまでは附属設備や構築物は定額法ではなく、定率法による取得も選択することができました。


平成28年4月以降に取得したものは選択の予知がなく、定額法のみしか使えません。
ただし、平成28年3月以前に取得したものは選択ができるということです。

また、太陽光発電設備を減価償却する場合には、通常、種類は「機械設備」に該当することになるため定率法を選択することが可能です。

建物附属設備について定率法を選択できなくなったのは、賃貸経営にとって不利だと思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、本当に不利なのでしょうか?

定額法と定率法

定額法とは、償却費の額が毎年同額(均等)となる償却方法です。
例えば、500万円の資産を10年間で償却する場合、毎年50万円ずつ均等に償却していくことになります。

定率法とは、償却費の額が毎年逓減する(少しずつ減る)償却方法です。
例えば、500万円の資産を10年間で償却する場合、1年目は100万円償却、2年目は80万円、3年目は64万円と、最初に大きく償却して年数が経過するごとに償却額が少なくなっていきます。

定額法と定率法による違いを実際の数字を使って見てみましょう。

≪前提条件≫
・所得金額500万円
・附属設備部分2,000万円
・附属設備の法定耐用年数は15年
・定率法の償却率は、平成24年3月31日取得のもの(旧定率法)を使用
※キャッシュフロー残とキャッシュ累計に注目してください。所得金額については、わかりやすくするために、「毎年500万円の所得があった」と定義しています。

上段が定額法を選択した場合で、下段が定率法を選択した場合です。

キャッシュフロー(手残り)の累計を見ると、15年間で定額法は64,556,627円、定率法は64,132,543円になり、定額法の方が若干手残りは多く残ることになります。
一体、なぜでしょうか?

これは、所得税の税率構造にあります。
「超過累進税率」といって、所得税は5%~45%の間で段階的に税率が変わっていきます。
所得が195万円までは5%、195万円を超えると超えた金額に10%というように階段状で税率が上がっていきます。

図で表すと下記の通りです。

減価償却、つまり経費を計上するということは、税率分の税金が減るということです。
同じ100万円の経費を使っても、税率5%のところで使った場合には5万円の税金が減ることになります。
しかし、税率が33%のところで使った場合には、33万円の税金が減ることになるのです。
つまり、税率が高いところで、経費を使った方が節税効果は高いのです。

定率法のように最初に大きく償却を取る(経費を計上する)ことによって、低い税率のところで税金を削っていることが少なくないのです。

定額法であれば、常に償却額(経費)は一定なので高い税率から削ることになります。
所得税のような超過累進税率の場合には、経費を分散させ高い税率を削る方が税金的にはトクになるのです。
これを「経費の分散化」と私は呼んでいます。

ですから、トータルの税金を考えると定額法の方が得になります。

しかし、定率法を選択したら損をするということではありません。
その年の税金が減ることになるため、資金繰りの面では、その方がよいということもあります。

1年目を考えると、手残り金額は定額法で4,329,500円、定率法で4,751,000円です。
定率法の方が、421,500円手残りが増えるのです。
例えば、この40万円を再投資して利益が増やせるのであれば、そちらを選択した方がよいことになります。

つまり、そこは経営判断になります。
ただ何も考えずに定率法を選択するのは経営判断ではありません。
その経営判断をするためには、長期の事業計画が必要であることは言うまでもありません。

売却との関係

長期事業計画を考えるにあたっては、出口戦略、つまりどの時点で売却をするかを考えなければなりません。

売却をすると、譲渡所得について所得税・住民税の税金が課税されます。
譲渡所得を算式で表すと次のとおりです。

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

譲渡収入から控除できる取得費は、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料などですが、建物の取得費は購入代金または建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

つまり、減価償却を多く取ると賃貸している間の税金(不動産所得)は減りますが、譲渡したときの税金(譲渡所得)は高くなってしまうのです。

不動産所得を減らした方がよいのか、譲渡所得を減らした方がよいのか。
これは税率で判断することになります。

不動産所得は、総合課税なので、所得に応じて15%~55%(所得税と住民税合算)で課税されますが、譲渡所得の場合には、短期譲渡(譲渡する年の1月1日時点で5年以下の所有)で39%、長期譲渡(譲渡する年の1月1日時点で5年超の所有)で20%の税率で課税されます。

所有する期間によって税率が異なるので、長期保有を目指すのか、短期でも売却するのかによっても戦略は変わってきます。

不動産投資家さんの中には、建物金額を大きくして早期に減価償却を多く取った方がよいと考える方もいらっしゃいますが、売却を考えるとそうとも限りません。
なかなか、このような判断をするのは難しいですし、いつ売却した方がよいのかは、そのときの相場によっても変わります。

それでも計画があるのとないのでは違います。
定額法、定率法の選択ひとつを取っても、計画があったうえで行うべきと考えます。

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