コラム

 

東京で「得がたい立地」に住む価値と方法

住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄 Yukio Sakurai
Profile
1954年生まれ。
「週刊住宅情報」で10年以上に渡ってマンション、建売住宅に関する分譲情報の取材を続ける。
「30年間後悔しないマンション購入術」(宝島社新書)、
「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)など著書多数。
テレビ朝日「スーパーモーニング」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、
「週刊文春」「毎日新聞」でも住宅関連記事を連載中。
執筆、講演、メルマガ等幅広い分野を通じて、視野の広さ、発想の斬新さ、文章力で人気を集める。
住宅評論家の第一人者である。

都心・準都心部では、よい場所ほど売らない

 マンションの売れ行きが低迷し、分譲価格も落ちている。マスコミではそんな記事・報道が多い。果たして、これは本当だろうか。
 毎年300件ほどのマンション、建売住宅を見ている私の実感からすると、確かに値段を下げている分譲マンションはある。しかし、すべてのマンションが売れ行き不振で価格を下げているわけではない。
 価格を下げているのは、主に郊外のマンション。その一方で、価格を下げずに売れてしまう都心部のマンションがあるし、準都心部では当初想定されていた価格を少し上げて売り出される物件もある。つまり、いろいろなのだ。
 私が見る限り、都心部と準都心部――そのなかでも住宅地として人気が高い場所で分譲されているマンションは価格が崩れにくい。価格が崩れないのは“売り物”が少なくなっていることも大きな原因だと思っている。
 その理由は、土地オーナーが地所を手放さなくなっているからに他ならない。
 なぜ、手放さないのか。その理由を探るため、もし自分が都心や準都心の一等地、例えば麻布や自由が丘、三鷹で広い土地のオーナーだったらどうするかを想像してみよう。
一等地を所有していれば、毎日のように「売ってください」「高く買いますよ」と言われるはずだ。しかし、すぐに手放すだろうか。長い目で見れば一等地は間違いなく上がる。賃貸マンションやオフィスビルを建てれば末永く収益を生み出してくれる。
「売るなんてもったいない」と思う。売らずに活用することを考えるはずだ。一等地のなかでも特に良い場所――例えば駅に近くて静かなど希少価値の高い場所であればなおさら売らない。
 それで、都心・準都心部では土地の売り物が減り、それに伴って新規のマンション分譲も減少。希に売り出されるマンションは希少価値があるため高い値段でも売れてしまう。そんな現象が続いているのである。

新宿

マンションにも当てはまる「裏道にこそ花の山」

禅林寺通り
 ここで、土地オーナーからマンションを購入する身に戻ろう。
 売られる土地が減っている今、都心や準都心でマンションを買う場合は、どうすればよいのか。それが購入者にとっての大問題となる。
 さて、どうするか。
私はかねがね不動産の買い方は、株の買い方と似ていると思っている。人気が高く、価格も高騰したモノは買ってもうまみがない。注目度が低く、価格も落ち着いているが、この後大きく上がる可能性を秘めているモノこそ買う価値がある――などなど株の心得は不動産を買うときにもピタリと当てはまることが多いのだ。
 そこで今の時期に当てはまる株の金言をさがすと「裏道にこそ花の山」というのがある。みんなが注目しない方向にこそ、お買い得な物件があると意味になろう。
 2008年の初夏時点で都心・準都心部での“裏道”はいくつかあるのだが、そのなかの一つが「借地権マンション」であるのは間違いない。

知っておきたい借地権の基礎知識

 ここで、借地権に関する基礎知識を解説しよう。借地権に関して理解されている方はこの章を飛ばし、次の章に移っていただいきたい。
 借地権とはなにか――
価値の高い土地を持つオーナーにとって、「売らずに利益を得る」方法の一つが土地を貸して賃料を得るというもの。この形式で建設されるマンションを「借地権マンション」と呼び、通常の「所有権マンション」と区別される。
 借地権マンションは、二つの種類に分けられる。「定期借地権」と「普通借地権」だ。普通借地権は一般借地権とか旧借地権とも呼ばれるとおり、昔からあった形態の借地の方式。これに対して平成4年、借地借家法の改正で生まれたのが「定期借地権」という方式だ。
 昔からある普通借地権は借りる側に有利な面が多く、地主には損な法律という声が多かった。地主にとって特に不利とされたのは「一度土地を貸すと、返ってこない」という点。借りる側の権利が強く、地主が「返して」といっても、借りている側が承諾しなければ返さなくてもよい。つまり、借りている側が主導権を握る。
地主としては借地にすると土地を手放したのと同様になるので、借地権では貸したくないと考えられるようになってしまった。
 そこで誕生したのが、定期借地権方式。土地を貸す期間を限定(50年以上)し、あらかじめ決めた期間が満了すると、いかなる理由があっても土地を返すという契約になっているものだ。これにより、手放したくない土地を持っている地主も「定期借地権なら貸してもよい」と考えるようになった。
 以上が普通借地権と定期借地権の違いである。

image photo

定期借地権より評価が高い「普通借地権」という方式

禅林寺
 定期借地権と普通借地権の違いを借りる側から考えてみると、「定期借地権もいいけれど、普通借地権ならばなおよい」ということになる。期限が定められないから、ずっと住み続けることができる。そして、50年後でも70年後でも借地権付きのマンションを売却できる。定期借地権付きマンションでも、期限内であれば売却は可能。しかし、契約満了に近づけば現実的に買い手が付きにくいと想像される。
普通借地権のマンションは、所有権マンションと同様に住み続けることができ、売ることも貸すこともしやすい。そして、都心部では今なお普通借地権で貸される土地が存在しているのだ。
 私の友人にも普通借地権でマイホームを持っている人間がいる。場所は新宿区内の四谷三丁目。都心部だが、寺が多い場所だ。その人はもともとお寺さんが経営する賃貸住宅を借りていたが、借地権で土地を借りないかと持ちかけられ、二つ返事で承諾。私も「そりゃあいい話だ」と勧めた。
 寺院が持っている地所を借地権で貸す――これは都心・準都心で昔からよくある話で、大きなお寺さんのまわりではごく普通の権利形態となる。だからこそ「そりゃあ、いい話だ」と思ったわけだ。

借地であるために、つくりのよさを追求

 借地権方式のマンションは、土地を取得するわけではないので分譲価格に土地代金が含まれない。基本的には建物代金だけを払う。そのため、所有権方式のマンションに比べ、割安な価格で分譲できることになる。やり方によっては、思い切り安くすることもできるのだが、それが正しい選択とは思えない。理由は、一等地に安普請のマンションはそぐわないからだ。
 借地権マンションは、多くの場合、憧れの一等地に建設される。そんな場所に建設されるマンションはつくりにおいても“上等”でなければ場所に似合わない。しかし、つくりをよくすれば建設費が高くなる。高くなるが、土地代を払わなくてもよいのだから、分譲価格は相場の範囲で収まる。
 つまり、借地権マンションのメリットを生かし、相場内の金額で相場以上に上質なつくりを実現する――それが、現代における借地権マンションの姿となる。
 ここで注意したいのは、上質なつくりといっても、飾りを多くするのではないということ。飾りではなく、本質的な構造をよくするのだ。
 まず、長持ちする躯体をつくり、間取りや設備は容易に交換できるようにする。加えて、住戸内の環境をよくするため、寒さ・暑さの影響を受けにくくする。むずかしい言葉で言えば、耐久性や更新性、断熱性などを高めるわけだ。これらは、地味な工夫であるが、住み心地に与える影響が大きく、住んだときの快適さも増す。ただし、お金がかかる工夫でもある。
 お金がかかるわりに、分譲時にアピールできる派手さがない。住み続けて「いいねえ」と実感できるたぐいのものである。そのため、通常のマンションでは、耐久性、更新性、断熱性は並レベルでいいから、なるべく分譲価格を安くして、という方向にならざるを得ない。
 その点、借地権付きマンションならば、価格を相場のレベルに抑えて、基本部分にお金をかけることができる。だから、借地権方式は、つくりのよいマンションを実現する上で非常に合理的な手法でもあるわけだ。

参考写真

シェルゼ三鷹禅林通りは第二世代のマンション

外観完成予想CG
※計画段階の図面を基に描き起こしたもので。
実際とは異なります。
 では、シェルゼ三鷹禅林寺通りというマンションはどうだろう。
 借地権マンションであり、つくりにはお金がかかっている。
建物に使用されるコンクリートの強度は30N(ニュートン)/mm2以上。100年以上の耐用年数が見込まれるコンクリートで、スラブの厚さも十分なものになっている。
 建物の構造躯体、つまり骨格(スケルトン)は100年以上もつ。ならば、中身も100年以上もつようにしなければならない――のだが、これは不可能。というのも、100年先を見越した設備器など導入したくてもできないし、好まれる間取りも変わる。10年前のマンションを見ても「設備や間取りが古いなあ」と思うくらいだから、100年先など予想しようもないわけだ。
 そこで、中身(インフィル)は、「100年もつ」ではなく、「100年の間、何度も簡単に変更できるようにする」。そうすれば、長く住み続けることができる。この発想でつくられるマンションを「S・I住宅」とよぶ。
 シェルゼ三鷹禅林寺通りは「S・I住宅」の発想で建設される。加えて、外断熱という断熱効果の高い工法を採用し、窓の断熱性も高めている。その結果、外の暑さ、寒さを室内に伝えにくく、室内に結露も生じにくい。結露がなければカビ・ダニの発生を抑える効用も生まれる。つまり、省エネで健康的な住まいが実現することになる。
外断熱であり、しかもS・I住宅であるマンションは極めて数が少ない。
シェルゼ三鷹禅林寺通りは時代を先取りしたマンションでもあるわけだ。同時に三鷹駅に近く、それでいて落ちついた住環境も備える。
借地権方式にのみスポットライトが当たりがちなマンションだが、実はその他にも注目点の多いマンションなのである。

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