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特集コラム

#マンション市場動向

2018.09.04

都心コンパクトマンションが住宅市場の主役になる未来

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当コラム第1回で、東京都の人口予測から都心マンションの価格が下がりにくい状況にあると述べた。その内容は、「今買っていいのか」「待ったほうがいいのか」、という多くの住宅購入検討者が抱える問いに答えるべく解説したものだが、では、「買うならばどんなマンションがいいのか」。今回は、そんな問いに答えてみたいと思う。

1世帯当たりの平均人数が減り続け2016年は2.47人に

問いの答えは、タイトルに出ているように、ずばり都心立地のコンパクトマンションだ。都心立地というのは、第1回で解説した通り、人口減少が始まるのが最も遅れるためで、住宅ニーズが最も長く維持されると期待できるからだ。そして、都心のなかでも「コンパクトマンション」が資産性という観点で、より優位にあるというのが筆者の考えだ。その理由を述べる前に、まずは言葉の定義を明確にしておきたい。

住宅業界では「コンパクトマンション」と言うと、「マンションの規模が小さく」かつ「専有面積が30~60m2程度のコンパクトな住戸がメイン」の物件を指すことがある。しかし、本コラムでは物件の規模によらず、「少人数世帯向け住戸」をコンパクトマンションと呼ぶことにする。というのは、マンションの資産性を考えるにあたって、規模よりも重要になる「少人数世帯向け住戸」であることにフォーカスできる適切な言葉が他に見つからなかったからだ。

前置きが長くなったが、筆者が「コンパクトマンション」の資産優位性に着目している理由は、相対的な将来ニーズの期待値にある。図1をご覧いただきたい。

図1)
「平成28年国民生活基礎調査」(厚生労働省)より
※平成7年は阪神淡路大震災の影響で兵庫県の数値を含まず。平成23年は東日本大震災の影響で岩手県、宮城県、福島県の数値を、同じく平成24年は福島県の数値を含まず。

棒グラフは全国の「世帯数」、折れ線グラフは同じく全国の「平均世帯人員(1世帯当たりの平均人数)」を表している。これを見ると、全国で人口減少が始まった2000年代後半以降も「世帯数」は増加し続けていることがわかる。その原因は、折れ線グラフが示す1世帯あたりの平均人数が減少していることにある。

グラフで振り返れる直近の2016年で、平均2.47人。データは省略するが、東京都では2017年に平均1.99人と2人を割っている。さらに平均世帯人員は長期的に下落トレンドにあり、今後も減り続ける可能性が高い。このトレンドが続けば、住宅を探す人のなかで「コンパクトマンションが丁度いい」という世帯が多数を占める将来が容易に推測できるわけだ。

住宅を探す人の大半が「1~2人世帯」になる未来

ただ、「平均値」には注意が必要だ。独身10世帯と4人家族10世帯の平均世帯人数は2.5人だが、2人家族10世帯と3人家族10世帯でも同じ2.5人となる。前者の状況なら独身世帯向け住宅と4人家族向け住宅に同じ数のニーズが存在するが、後者の状況だと事情が異なってくる。当たり前だが「住宅のニーズ」は「世帯数」に相関するため、平均値だけでなくどんな人員構成の世帯が増えるのかを押さえておく必要がある。そこでご覧いただきたいのが図2だ。

図2)
「平成28年国民生活基礎調査」(厚生労働省)より

これは世帯人員(人数)別の構成割合の推移グラフだ。これを見ると、2人世帯の割合が最も高まっていて、1人世帯がその次にきていることがわかる。2016年時点ですでに1~2人世帯だけで55%を超えている状況だ。3人世帯は微増トレンドを維持しているが全体の20%程度に留まり、4人以上世帯の割合は明確に低下の一途にある。

このグラフは60年余りという長期の推移を表しているが、その間、明確なトレンド転換が見られたのは、唯一1950年代から増加を続けていた4人家族の割合が1980年代に入って減少トレンドに転じた部分のみ。つまり、世帯人員ごとの増減トレンドは数十年単位で考えても簡単には変わらないということだ。

3~4LDKのファミリータイプの買い手は少数派になる

このような前提で、このまま1~2人世帯の明確な増加トレンドが続いた場合、マンション市場にどんな変化が起こるだろうか。

まず、30~60m2程度のコンパクトマンションのニーズが相対的に高まり、市場価値が維持されやすくなることはほぼ間違いないだろう。1~2人世帯でもより広い住宅に住みたいと考える人もいるだろうが、立地条件が同等なら面積が小さいほうが購入価格を抑えられるので、堅実な経済感覚ならば必要十分な広さを選ぶケースのほうが圧倒的に多いはずだからだ。

また、多人数世帯向けの3~4LDKのニーズが相対的に細ることで、面積と価格が単純比例しなくなる可能性もある。たとえば、どんな面積にも均一にニーズが存在するならば、50m2が5000万円(m2単価100万円)で買えるエリアでは、80m2は8000万円前後の価格がつくのが自然だ。

しかし、多人数世帯が減少する将来は、50m2が5000万円のエリアで70m2は6500万円(m2単価約93万円)、80m2は7000万円(m2単価約88万円)といった具合に、面積が広いほど買い手が少なく、単価を割安にしないと売れなくなる事態もありうる。ニーズが細るとは、そういうことである。

面積が広めのマンションのm2単価が割安になるのは買う人にとっては福音だが、それを所有する人にとっては資産価値が下落することに他ならない。マンションの資産価値は将来ニーズの高さ次第であり、そのニーズが今後高まっていくことがほぼ確実なコンパクトマンションは、現在主流の3~4人家族向けファミリータイプよりも中長期的に資産優位性が期待できるというのが筆者の分析である。

労働参加率が高い「1~2人世帯」は通勤利便性を最重視する

最後に、資産優位性の観点で、都心立地を選ぶこと、あるいは都心立地に手が届かないならば、都心に出やすい交通利便性を備えた立地を選ぶことの重要性について、第1回で説明した人口減少とは異なる側面から補足しておこう。

一般に、子どもがいない夫婦は共働きを続ける障害が少なく、単身者は自身が働かなければ生計を維持できないため、1~2人世帯の人は必然的に労働参加率が高くなる。ずっと働き続ける以上、住まい選びで通勤利便性を重視する人が圧倒的多数になるのは間違いない。

そして彼らの通勤先として意識すべきは都心部である。もちろん都心部以外に通勤する人も少なからず存在するし、通勤利便性を重視しない人もゼロではないだろう。しかし、不動産の資産性には「より多くのニーズが期待できること」が重要であり、少数派の動向は大勢に影響を与えない。

今現在も、都心部に通勤する人が圧倒的多数派だからこそ、都心や都心近郊立地にニーズが集中し、そうした立地の資産評価が高くなっている現実がある。将来も都心通勤者が多数派である限り、都心や都心に出やすい路線の駅近立地には底堅いニーズが期待される。そのことも、筆者が都心や都心近郊のコンパクトマンションの資産価値が他の条件のマンションと比べて維持されやすいと考える理由のひとつである。

山下伸介(やました・しんすけ)

山下伸介(やました・しんすけ)

住宅ライター
1990年、京都大学工学部卒業、株式会社リクルート入社。2005年より住宅情報誌「スーモ新築マンション」「都心に住むbySUUMO」等の編集長を10年以上にわたり務め、2016年に独立。現在は住宅関連テーマの企画・執筆、セミナー講師などを中心に活動。財団法人住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー」運営委員も務めた(2005年~2014年)。株式会社コトバリュー代表

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