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2008.11.22:Vol.201

改正建築士法の施行(業務内容の重要事項説明が義務化など)

姉歯事件によって失われた「建築物の安全性と建築士制度に対する国民の信頼」を回復するために、2006年に建築基準法と建築士法がそれぞれ改正されました。このうち、専門家が構造計算書をチェックする制度の導入など建築確認手続厳格化等の改正建築基準法は、昨年6月20日から施行されています。今年は、建築士の資質・能力の向上などを目的とする改正建築士法が、11月28日から施行されます。

この事件が与えた問題には、「建築士」という資格に対する信頼が大きく揺らいでしまった、という点がありました。2007年6月20日の建築士法一部改正で、罰則の強化や報告義務などが制定されましたが、今回の2008年11月28日の本改正では、定期講習の義務付けや管理建築士の要件強化、管理建築士等への重要事項説明義務などが施行されます。また、来年2009年5月27日には、今回創設された構造設計一級建築士・設備設計一級建築士による、「一定の建築物に対するこれら資格者の関与の義務付け」制度が施行されます。

本年11/28施行の改正=新たに義務付けられる制度の要点
(1) 建築主に対して重要事項説明が義務付けられます。
宅地建物取引における重要事項説明と同様の主旨で、消費者に対して設計業務内容や取引条件を理解し確認する機会を確保するねらいがあります。重要事項としては次のような内容が必要とされており、設計契約締結前に書面での説明が求められます。
1) 対象となる建築物の概要
2) 作成する設計図書の種類(平面図、立面図、断面図・・等)
3) 工事監理を受託する場合の工事と設計図書の照合及び報告の方法
4) 業務の委託先の有無と相手先
5) 設計や工事監理に従事する建築士(氏名及び資格)
6) 報酬額及び支払時期
7) 契約解除に関する事項
8) 説明する建築士の氏名と資格(基本的には建築士事務所の管理建築士が説明します)
建築士は携帯型の免許証の提示が義務付けられます。名簿の閲覧も開始されます。
(2) マンション等の設計の再委託が制限されます
マンションのような、一定の建築物(3階建以上かつ延べ1000㎡以上の共同住宅)は、委託者が許諾したとしても、設計の一括再委託(いわゆる丸投げ)が全面的に禁止されます(姉歯事件の再発防止策として)。マンションという建物形態では発注者とエンドユーザーが異なる状況を踏まえての措置です。
(3) 建築士の資質能力の向上が図られます
1) 建築士事務所所属の建築士は3年に一回の定期講習が義務付け
2) 試験の見直し、学歴要件・実務経験要件の見直し など

来年5/27日施行の改正
・構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の関与の義務付け開始
この新たな資格は、一級建築士として5年以上構造設計や設備設計に従事した後、講習を修了した者に対して新たに与えられる資格。来年5/27以降に設計される高度な専門能力を必要とする一定の建築物には、この資格者の関与が求められます。

なお、懸念されていた、「小規模木造住宅にかかる構造関係規定の審査省略見直し(戸建住宅の構造計算書の提出義務)」については、一定の周知期間を置いて、設計者等が内容を十分習熟した後に施行することとなっていますので、現在のところ施行時期は未定です。

今回の改正で、平成17年秋に発覚した耐震偽装事件に端を発した一連の建築基準法等の改正の動きは、3年を経て一段落を迎えることとなります。
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