不動産コラムトップ  >  Vol.198
不動産コラム
地価や不動産の法律・税制、時事の話題などの情報を、さまざまな視点から解説・紹介しております。
コラムトップ 不動産価格 税金 法律・制度 社会動向 その他の話題
 
バックナンバー一覧

2008/08/02:Vol.198法律や制度

事業用借地権の設定期間は10年以上50年未満に

本年1月1日から事業用借地権の設定期間についての改正が行われています(借地借家法)。従来の事業用借地権の設定期間は、「10年以上20年以下」というものでした。今回の改正で、定期借地権は、事業用と居住用との区別はありますが、10年以上であれば、年数の制限を受けずに設定が可能になったわけです。特に、収益性を重要視する事業用の建物利用においては、借地権の範囲が広がったことで、活用の可能性が高まったといえるでしょう。

「事業用借地権」は、1991年に成立した新借地借家法に基づいてできた「定期借地権」の一つの類型で、事業の用に供する為に一定期間利用する権利をいいます。定期借地権は、契約の更新が無く、契約上の存続期間の満了によって確定的に終了する借地権をいいますが、これには3類型があり、事業用・居住用を問わず設定できるのが一般定期借地権、専ら事業の用に供する建物を所有する目的で設定されるものが事業用借地権で、他に建物譲渡特約付借地権があります。
この事業用借地権は「10年以上20年以下」という借地契約の存続期間が条件となっていましたが、今回の改正で、「10年以上50年未満」へとその期間が拡大されました。その主な理由は、大規模な建物での活用ニーズが増大したことや、その場合の税務上の償却期間とのずれが大きすぎるので是正して欲しいというニーズが強くなってきたことがあるようです。存続期間が20年ということは、償却期間が30年・40年という建物の場合は、まだ利用価値が高い段階で建物を壊してしまわなければならないといった無駄が発生してしまうことになっていたわけです。
この改正による効果は、下記の3つがあげられます。
  • 設定期間の長期化に伴い、税法上の償却期間とのミスマッチが無くなる。
  • 定期借地の空白期間が埋まるので、土地所有者にとって有効活用がしやすくなる。
  • 建物の長期存続を前提とした資金計画等が可能になり長期的な観点での開発等、地域の活性化にも資する。(上記「効果」は国交省の見解)
上図をみていただくと、改正前は、20年~50年の間は、定期借地権の設定が出来ない期間だったところが、今回の改正で、10年以上であれば、事業用として50年未満まで、50年以上であれば居住用・事業用問わずに定期借地権が設定できることとなったわけです。借りる側は20年よりもう少し長い期間借りたい、貸す側は50年以上という年数は長すぎる、という双方の意向に沿った形となったといえるでしょう。
今回の改正を理解する上で重要なキーワードは、「定期」という用語の有無にあります。従来「事業用借地権」といっていたものが、今改正では「事業用定期借地権等」と表現されていて、「定期」いう用語が事業用にも付加されるように変化しています。
事業用借地権というのは、普通借地権(30年以上に限るという存続期間制限あり)に対して、それより短い期間での存続期間(従来20年⇒今回30年未満と変更された)を設定する特殊な借地権として[23条2項]の規定により借地権更新等の規定が当然に不適用なるという概念なのに対して、今回の改正で新設された30~50年の事業用定期借地権では、借地権存続期間を「特約」することによって借地権更新等の規定を排除することができる(23条1項)というしくみになっているといえます。
[an error occurred while processing this directive]