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不動産コラム
 Vol.111 (H16.2.13)  


建築物ストックの概要(不適格建築物の現状)


国土交通省は、我国の経済社会情勢の変化を踏まえたとき、建築物はフローからストックの時代への転換期にあると位置付けており、既存建築物の有効な活用が進められていく事が重要であるとして、そのための建築行政のあり方について社会資本整備審議会から答申が出されました。その資料となるべき既存建物の現況調査を実施していますので、その結果から、日本の建築物の不適格具合の現状と課題を報告します。


平成14年9月に当欄で、「コンバージョン」の話題を取り上げて以後、この言葉が急速に普及してきているのはご存知の通りです。あるいは、もう9年が経過したあの阪神大震災では、「大破」以上の被害を受けた建築物のうち94%が現行の耐震基準を満たさない建築物であったという事実も改めて思い起こされます。また、平成13年新宿歌舞伎町の雑居ビル火災に見られるように、防火避難に関する最低限の基準を満たしていない既存建築物が多数存在したままである事も懸念されます。

一方、建築行政の側でも、阪神大震災のあと、建築確認検査段階の法令遵守の重要性を認識し、平成10年から確認検査業務を民間開放する事と合わせて特定行政庁の指導強化を図った結果、建築確認の完了検査率が、改正以前の3割程度というお粗末さから、平成14年度では7割弱にまで向上してきているという報告があり、これは驚くべき結果といえます。

国土交通省の建築物ストックについての調査報告から、一部をご紹介します。

  1. 住宅ストック数は、約5000万戸。そのうち居住世帯のあるものが4400万戸です。
  2. 非住宅ストックのトップ3は、事務所4.4万ha(26%)、店舗3.7万ha(22%)、学校3.4万ha(21%)。
  3. 住宅及び非住宅ストックの竣工年代別の割合は下記のようになっています。
●竣工年代別住宅ストック全体 ●年代別非住宅建築ストック全体

以上から、建築基準法の新耐震基準が制定された1981年以前の建物は、住宅が48.4%、非住宅が54.6%と、ほぼ全体の半数に達していることが分かります。

一方、別の国土交通省調査によると、居住世帯住宅の総ストック4400万戸(戸建2360万戸、共同住宅2040万戸)のうち、耐震性において不適格と推定される住宅は、戸建住宅の51%(1200万戸)、共同住宅の10%(200万戸)を占めています。非住宅においても、事務所建築の31%、店舗の35%、学校の50%が新耐震基準を満たしていないと推定されています。

また、容積率の既存不適格のマンションも多いのですが、国土交通省の推計によると、東京都内の容積率不適格マンションの割合は、民間マンションでは1975年以前の建築では65%強、1976~1980年建築では11%となっていて、これらは建替えの際の課題になってきます。

現実には、こうした既存不適格建築は、法令の改正等により不適合になっていても、増改築等を行わない場合は法令に適合しないまま存在する事を許容している実態があり、一方で、増改築を行う場合は即時に建築物全体に不適合である規定の遡及適用が行われる事となっています。この結果、安全性能の向上を図るための部分改修を実施しようとしても認定されないためその改修を断念せざるをえないという「凍結効果」が生じて、結果として改善がなされないままの建物ばかりが残る事になっていることが答申でも指摘されているところです。

ストックの時代への転換を図るためにも現実的な施策が待望されます。