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不動産コラム
 Vol.103 (H15.11.4)  


女性労働力への期待~少子化時代の経済成長~


このほど、OECD(本部はパリ)による日・オーストリア・アイルランドを比較対象とした『仕事と家庭生活のバランス』と題する報告書が発表され、その中で、人口減少による日本の将来の労働力不足を回避するためには、『働く母親への一層の支援が必要』との見解を表明しています。総務庁から今年7月に発表された、就業構造基本調査の資料とあわせて、女性労働力の現状について見てみましょう。


OECDの報告書は、日本で今後生じると見られている労働力不足に対して、『労働市場には男性と同様の女性の参加が必要だが、現行の国の政策や雇用慣行の一部には特に女性が出産後に働くことを妨げているものがある』と指摘しており、仕事と家庭生活のバランスを改善する為のいくつかの政策提言を行っています。
(参照 http://www.oecdtokyo.org/index.html

その中では、『日本の女性の70%は未だに、出産を機に退職し、労働力からは脱落していき、その大半が育児休業制度を利用していない。子供が成長した後に再就職しても低賃金で不安定な「自分の能力以下」の仕事につく場合が多い。』と分析しています。 また、『企業が提供する配偶者手当と同様、国の保険年金制度は女性が一定の金額以上稼ぐことを妨げていて、結果的に高学歴の日本女性でもキャリアと母親業を両立させるのは困難な状況で、大卒男性の95%が職を得ているのに対し大卒女性では65%に留まっていて、人的資本への投資が無駄になっている』と、日本に対して女性の就労率の引き上げを促しており、女性のキャリア促進を阻む『ガラスの天井』は日本において最も顕著であるとしています。 さらに、専業主婦である妻を持つ日本人男性は家事や育児に毎日13分間しか費やしていず、オーストリアではこの数字が2.5時間となっていることと比較して、『日本の長時間労働の習慣が、母親の無報酬での家事労働を強いている』とも指摘しています。

一方、「就業構造基本調査2002年」(総務庁5年毎調査)のデータから作成した日本の女性の有業率を年齢階級別にみると、30~39歳の部分が大きく落ち込むいわゆる『M字カーブ』を描いています。これは一旦就業した女性が結婚・出産・育児を経て再び労働市場に戻るライフコースを示していると考えられます。


この図から、女性の潜在有業率(有業率に就業希望の無業者率を加えた数字)ではM字の落ち込みが小さいことが分かります。米国の女性労働力の調査(右上図)では現在M字カーブを描いていないことから、日本でも環境を整備すればM字カーブの解消が可能となると言われており、OECDの今回の報告はそうした日本の現状を受けた指摘だと言えると思います。 なお、M字カーブの底にあたる25~29歳、30~34歳の階層で近年有業率が上昇していて、これは社会環境の整備によるものではなく、未婚率上昇の影響であると指摘されています。
※参考:旧大蔵省財務総合政策研究所研究報告2000.10「少子高齢化の進展と我国経済社会の展望」





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